【2021/05/07】

 ゲーム・ネット依存は、まだ歴史が浅く、認知度は低い。この分野で先進的な取り組みを行っている久里浜医療センター(神奈川県横須賀市)の樋口進院長(66)に、リモート取材で患者への対応や今後の課題について聞いた。

-ゲーム・ネット依存とはどんな病気でしょうか。

 「依存とは、ある行動が過剰になったために問題が生じることを指す。ゲームの場合、勝ったり仲間に認められたりすることで、多幸感やわくわく感が生じる。過剰な行動の結果、睡眠障害や不登校、引きこもりや親とのいさかいが起こる」

 「依存は、ゲームが単純に好き、いじめで学校に行けなくなる、対人関係が苦手などさまざまな要因が絡み合う。発達障害の患者も一定数いる。いずれにしても、患者の考え、問題を理解した上で対人関係がうまくいくように支援する。息の長い治療プロセスになる」

-新型コロナウイルスによる影響も懸念されています。

 「巣ごもりの影響は大きい。世界の国々でゲーム時間やゲーム機の販売が増加しているとの報告が来ている。久里浜の患者でも、コロナ禍前に比べて1日の使用時間がネットで約2・6時間、オンラインゲームで1・5時間それぞれ増加するなど、状況が悪化している」

-2011年7月、日本で初めてネット依存治療の専門外来を開設しました。

 「開設当時から患者の多くが、オンラインゲームの利用者だ。使用機器はパソコンやゲーム機より、スマートフォンが増えている。通信環境の整備に伴い、スマホでさまざまなゲームができるようになり、プレーヤーが大幅に増えた」

-年齢層や性別で差は。

 「久里浜の外来患者の年齢層は未成年7割、中高生は5割。男性が9割を占める。若者が多いのは世界的な傾向だ。最近は小学生など低年齢化の傾向もみられる。発育段階の子どもは自己制御が難しく、『このままだとまずい』との気持ちがあっても、やり続けてしまう」

 「男性はオンラインゲーム、しかも依存性の高い対戦型を好む傾向がある。逆に女性は会員制交流サイト(SNS)や育成系のゲームを好む傾向がある。SNSなどの依存性は比較的低く、はまったとしても病院に連れてくるほど重症化するケースは少ないとみられる」

-課題は何ですか。

 「ゲームをするのは主に子どもたちで、学校での予防教育導入が急務だ。早期発見、対応が必要だが、スクールカウンセラーがゲームの専門家とは限らない。人材を育てるため、久里浜では、全国の教育、治療、相談対応の三つの関係者に分けて研修を行っている。全国の治療施設は把握しているだけでも20年9月時点で約90カ所。徐々に増えているが、まだ足りていない」

-樋口院長の働き掛けもあり、世界保健機関(WHO)が19年に「ゲーム障害」として認定しました。今後の見通しは。

 「国内でも来年1月から正式に患者数など統計が取られ始める。患者の背景や症例により状況は異なり、対応が定型化されていない。われわれも悩みながら治療に当たっている。現在治療薬はないが、今後治療薬が出てくるかもしれない。病気としての認知が進み、対策が加速することを期待している」

◎樋口進(ひぐち・すすむ)1954年山梨県生まれ。東北大卒。米国立保健研究所留学、国立療養所久里浜病院(現久里浜医療センター)臨床研究部長などを経て2011年から現職。主な著作に「ゲーム・スマホ依存から子どもを守る本」(法研)「Q&Aでわかる子どものネット依存とゲーム障害」(少年写真新聞社)など。