心をつかむ指揮に注目

 チョン・ミョンフンの指揮に最初に注目したきっかけはベルリオーズの「幻想交響曲」のCDであった。30年も昔の話で、当時音楽監督をしていたパリ・バスティーユ歌劇場管弦楽団の演奏だった。

 たまたま私が子供の頃から好きだった曲なのだが、各パートが自由に呼吸し、しかも楽員全員が静かな磁場に引きつけられているかのような、文字通り目の覚めるような演奏であった。

 その後、彼の実演に接する機会が何度かあり、YouTubeでも聴いているが、今もってその独特なサウンドの謎は解けない。とにかくこの人が指揮するとオーケストラの音が不思議なほど変わるのだが、それが緻密なリハーサルを通じてなのか、両手の描く美しい弧線のな...

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