県民の不安を振り切っての再稼働だ。原発の制御に関わるミスがなぜ30年間も見過ごされてきたのか、その説明もないまま、性急すぎる。東京電力に一層厳しい目を向けざるを得ない。

 東電は21日、約14年間停止していた柏崎刈羽原発の6号機の原子炉を起動し、再稼働させた。

 2011年3月に未曽有の福島第1原発事故を起こした東電が事故後初めて原発を稼働させる。日本にとって大きな転換点である。

 22年に原発の「依存度低減」から「最大限活用」へとかじを切った政府にとっても、象徴的な再稼働といえるだろう。

 だが、6号機の重要装置である制御棒の警報システムでトラブルが発生してから4日しかたっていない。30年間見落とされてきた設定ミスが原因だった。

 なぜそうした事態に至ったのか、納得のいく説明がないまま、東電は当初予定を1日遅らせただけで再稼働に踏み切った。

 チェックする立場にある原子力規制庁も「制御棒そのものではなく、警報装置の問題」として重大視しなかった。

 しかし6号機では昨年6月と8月にも制御棒に関するミスが起きている。ミスが重なれば事故につながりかねない。警報装置の問題と片付けていいものなのか。

 いわゆる「原子力ムラ」と言われる原発に携わる側の安全意識と、県民が求める安全や安心との溝が明らかになったといえる。

 東電の小早川智明社長は6日、6号機の再稼働について問われ、「福島の事故の反省と教訓を安全に生かすのが最大の使命だ」と語っていた。

 トラブルを素通りするかのような今回の対応は、「反省と教訓」から遠い。

 東電は改めて、過酷な原発事故を引き起こした事実と向き合ってもらいたい。

 原発事故では、最大16万人以上が福島県内外への避難を強いられた。15年たってもなお古里に戻れない人たちがいることを忘れてはならない。

 福島での廃炉の責任も負う。作業は困難に直面しており、最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しは、計880トンあると推計されるうち1グラム未満の試験採取にとどまっている。

 復興と再稼働を両立させることができるのか。東電が負う責任は極めて重い。

 柏崎刈羽6号機に関しては、テロ対策施設も完成していない。

 事故が起きた際に備える避難道路も整っておらず、避難の実効性は現時点で担保されていない。

 県が昨年行った県民意識調査では、約7割が東電による原発の運転に不安があると回答した。

 立地地域の信頼を得ようとするならば、ひたすらに安全を重視する姿勢を示すべきである。