安全保障政策の歴史的な大転換となるものだ。なし崩しに、歯止めが外される事態を危惧する。

 自民党が防衛装備品の輸出ルール緩和に向け提言案をまとめた。戦闘機や護衛艦のような殺傷能力のある武器を含む完成品の輸出を原則容認する。

 これを受け、政府は今春にも防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、輸出を認める装備品を「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の非戦闘目的5類型に限定することをやめる方針である。

 高市早苗首相は参院代表質問に答え、「装備移転をさらに推進し、地域の抑止力を向上させることが必要だ」と意義を強調した。

 武器輸出拡大で防衛産業の基盤を強化し、経済成長につなげる狙いがあるとみられる。

 しかし、紛争の拡大や軍拡競争を招く懸念は拭えない。そのリスクにも目を向けるべきである。

 日本は戦後、平和国家として各国と友好関係を築いてきた。武器輸出によって、各国からの信頼が損なわれないか心配だ。

 自民案は、武器の輸出先を、秘密保護などに関する協定を日本と締結する国に限定するとした。

 輸出の可否は国家安全保障会議(NSC)で審査する。閣議決定や国会の関与を審査手続きの要件としない。

 衆院予算委員会で野党議員が国会の事前承認が必要と主張したのに対し、首相は「NSCの厳格審査を経て、政府が主体的に行っていく」と述べ、事前承認は不要との見解を示した。

 防衛相経験者は「国会承認を条件にすれば、輸出先の需要に応じた柔軟な対応が取りづらくなる。事後的な報告にとどめた方が良い」と解説する。

 NSCは4大臣で構成され、首相が議長を務める。会議の内容はほとんど公表されない。これでは政治の裁量が大きく、事実上、歯止めがかからないのではないか。

 戦闘中の国への輸出は「原則不可」とした。だが、「わが国の安保上の必要性を考慮して特段の事情がある場合」は例外とし「現に戦闘が行われていると判断される国」への輸出にも余地を残した。

 輸出先として注目されているのは、ロシアから4年にわたり侵攻を受けているウクライナである。

 ロシアの弾道ミサイルを十分に迎撃できず被害が拡大しており、ゼレンスキー大統領は、日本からの防空兵器の供与に強い期待感を示している。

 しかし、兵器の供与は、これまで行ってきた地雷除去や復興支援とは明らかにレベルが異なる。

 自民と日本維新の会は衆院選で圧勝したとはいえ、選挙期間中に武器輸出について議論がなされたとは言い難い。巨大与党の数の力によって、国民の間に慎重論もある武器輸出を強引に推し進めることは許されない。