再審が確定するまで長い時間を要する実態が改めて浮き彫りとなった。冤罪(えんざい)被害の早期救済を図るために再審制度をどう見直していくべきか、国会でしっかり議論してもらいたい。
滋賀県日野町で1984年、酒店経営の女性が殺害され手提げ金庫が奪われた「日野町事件」で、強盗殺人罪で無期懲役が確定し、服役中に病死した阪原弘(ひろむ)さんの第2次再審請求で、最高裁は検察側の特別抗告を棄却した。
阪原さんは無罪を主張し再審請求したが、2011年に亡くなり審理は打ち切られた。長男ら遺族が翌年に第2次請求していた。
第2次再審請求で地裁は自白の信用性が揺らいだとし、高裁は実況見分が誘導された可能性に触れ不適正だったと示唆するなど、いずれも再審開始を認めていた。
最高裁は「地裁決定の結論を正当とした高裁判断に誤りがあるとは認められない」とした。
死刑・無期懲役が確定した戦後の事件で、本人の死後に遺族らが請求した「死後再審」の開始決定は初めてとなる。
今後の大津地裁での再審公判で無罪となる公算が大きい。
静岡県一家殺害事件での袴田巌さんや、福井中3殺害事件の前川彰司さんなど再審無罪が相次いでいる。警察や検察の捜査、確定判決を下した裁判所など司法への信頼が揺らぐ事態だ。
今回も問題は、地裁や高裁で再審開始が決定されても、検察が不服として繰り返し抗告するため、確定まで長期化したことにある。
第2次請求の申し立てから14年、地裁の決定からは約7年半も要した。長男が「時間がかかりすぎた。憤りを感じる」と述べたのはもっともだ。
裁判所での審理に時間がかかりすぎることも長期化の要因だ。地裁の決定は、遺族の申し立てから6年4カ月かかった。
常に多数の事件を同時並行で抱える裁判官にとって、再審事件は「後回しになりがち」と指摘する関係者もいる。
長期化は請求者には大きな負担となる。公判の迅速な進行に知恵を絞るべきだ。
再審制度を巡っては、法制審議会が制度を見直す刑事訴訟法の改正要綱を取りまとめ、法相に答申した。政府は今国会に法案を提出する予定だ。
しかし、検察の不服申し立てを禁じる規定が盛られず、証拠開示の範囲が限定的になるなどの問題がある。冤罪事件の当事者や弁護士から「検察寄り」「改悪」などの批判が出るのも当然だろう。
申し立て禁止を盛った超党派の国会議員連盟による法案を支持する意見も自民党内にあるという。
冤罪からの速やかな救済が再審制度見直しの原点だということを肝に銘じ、国会での活発な議論が求められる。
