米国による暴挙である。中東における緊張を一気に高めるものだ。軍事介入をすぐさま停止しなければならない。
米国とイスラエルが、イランを大規模に攻撃した。1日も弾道ミサイル関連施設などを標的に攻撃を続けた。
国営イラン通信は1日、最高指導者ハメネイ師がこの攻撃で死亡したと報じた。トランプ米大統領は交流サイト(SNS)に「裁きだ」と投稿した。
反米勢力として敵対視してきたイランの権力者殺害は、体制転換を狙ったものだろう。
イランの学校が被害を受け、死者が出たとの報道もある。イランは報復し、イスラエルだけでなく、周辺のアラブ首長国連邦やカタールの米軍駐留基地を攻撃した。中東全体に混迷が拡大する事態を危惧せざるを得ない。
米国は、核開発阻止に向け、ウラン濃縮活動の完全停止などについてイランと協議していた。そのさなかに不意打ちに出た形だ。
トランプ氏は攻撃の根拠として、イランの開発する長距離ミサイルを挙げた。「近く米本土を射程に収める可能性がある」とし、「差し迫った脅威」であると主張し、攻撃を正当化した。
だが米国防情報局は、米本土に到達するほどのミサイルを開発するには2035年までかかるとの分析を公表していた。トランプ氏の主張と矛盾するものだ。
国連憲章51条が自衛権の行使として定めるのは「緊急時のやむを得ない場合」である。米国の攻撃に大義は見えず、国際法違反の疑いが拭えない。
米国は03年のイラク戦争でも、イラクの大量破壊兵器保有を大義に開戦したが、そのような兵器は見つからなかった。イラクを長い混乱に陥れた過去の教訓を忘れてはならない。
懸念するのは、米国の攻撃が核関連施設を攻撃した昨年6月に比べ広範で大規模であることだ。
トランプ氏は「(イランが)たった1日で大きく破壊された」と誇示し、激しい精密爆撃を「中東や世界全体の平和という目的の達成まで続ける」と述べた。
イスラエルのネタニヤフ首相も数日間でイランの数千カ所を対象に継続する構えを示している。
いずれも自らの政権維持のために、対イランでの成果を得ようとするのであれば言語道断である。
国連のグテレス事務総長は「平和と安全に対する重大な脅威を目の当たりにしている」と、紛争拡大に危機感を示した。
圧倒的な武力にものをいわせるトランプ氏の手法は、今年1月にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した際と同じである。
米国の独善は許されない。目指すべきは、ルールにのっとった秩序ある国際社会だ。中東の安定へ、各国の自制が求められる。
