主要な野党が参加を見送る中、見切り発車した感が否めない。長期的な視点で多様な意見を戦わせる国民的議論ができるのか。甚だ疑問である。

 政府、与党は2年限定の飲食料品の消費税率ゼロや、給付付き税額控除について話し合う社会保障国民会議の初会合を開いた。

 高市早苗首相は「丁寧に、スピード感を持って進めたい」と強調した。夏前に中間取りまとめを行い、早期に国会に法案を提出したいと意欲を示した。

 自民党は衆院選で飲食料品を消費税の対象から外す公約を掲げた。首相は2026年度中の実現を目指すと踏み込んだだけに、前のめりになっているのだろう。

 しかし、超党派で議論するとしてきた国民会議に参加した野党は消費税減税に反対するチームみらいだけで、思惑が外れた形だ。

 消費税減税や給付付き税額控除に前向きな中道改革連合と国民民主党は、与党から参加を求められたが、見送った。順調に進まなかった場合、野党のせいにされる責任転嫁を警戒した。

 政府、与党が法案をつくり、国会に提出することも可能だったはずである。あえて国民会議を設ける理由について、説明が足りなかったのは明らかだ。

 参政党や共産党には参加を呼びかけなかった。両党は消費税廃止を掲げているため、議論の拡散を防ぎ、限られた時間で成果を出すためだという。

 参加政党を選別し、異論を排除した上で、議論を深めることができるのか。与党の態度は不誠実と言わざるを得ない。

 消費税減税を巡る問題は山積している。小売業界ではシステム改修などに半年から1年が必要とみられ、混乱する恐れがある。

 飲食料品の税率がゼロになり、店内飲食が10%に据え置かれると、外食産業の売り上げに影響しかねず業界団体は反対している。

 税収減は年5兆円規模に上る。首相は赤字国債による穴埋めを否定し、補助金の見直しなどで捻出する考えだが、財務省内には代替財源を不安視する見方もある。

 消費税は社会保障の重要な財源となっている。そもそも減税が正しい判断なのかも含め、丁寧な議論が求められる。

 首相が「改革の本丸」と位置付ける給付付き税額控除は、所得税の控除と現金給付を組み合わせた制度である。

 納税額が少額で、減税だけでは恩恵を受けづらい中低所得者を支援できるメリットがある。

 一方、収入や資産を正確に把握する方法の構築など、制度設計は極めて難しい。

 給付や減税は、税金などの負担感が低所得者ほど重いため、手取りを増やすのが狙いだ。物価高への迅速な対応は欠かせないが、拙速な議論になってはならない。