いよいよ実用化だ。再生医療の新たな一歩として、患者や医療関係者の期待は大きい。今後も慎重に検証を進め、有効性を見極める必要がある。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った2種類の再生医療等製品について、厚生労働省が製造販売を承認した。これにより、iPS細胞を使った再生医療が、世界で初めて一般医療として実用化されることとなる。
承認を受けるのは、重症心不全を対象とした「リハート」と、パーキンソン病を対象にした「アムシェプリ」だ。
リハートの場合、他人のiPS細胞から作製した心筋細胞をシート状に培養し、心臓の表面に貼り付ける。定着すると新たな血管ができるとされる。
臨床試験では患者8人に移植された。いずれも疲労感や動悸(どうき)が軽くなったという。
アムシェプリも、これまで症状を和らげる薬だけだったパーキンソン病に、根本的な治療の道を開く可能性があるとされる。
患者からは「大きな一歩」と喜びの声が上がっている。治療の選択肢が増えることを期待したい。
留意しなければならないのは、今回の承認が、有効性が推定段階の「仮免許」だという点である。治験の症例数が少ないためだ。
厚労省は2製品に対し、7年間の期限内で有効性を確認するよう条件を付けた。リハートには、作用を説明できる詳細なデータを収集することも求める。
リハートを開発した澤芳樹大阪大特任教授は、今後20程度の医療機関で有効性や安全性を調査すると説明している。
アムシェプリに関わった京都大iPS細胞研究所の高橋淳所長も、期限が付いた承認に触れ「この治療法が一日も早く、真に信頼される標準的な選択肢となるよう尽力していく」と述べた。
患者への使用は、早ければ今年の夏ごろに始まると見込まれる。データを丁寧に分析し、効果を明らかにしてもらいたい。
iPS細胞は京大の山中伸弥教授が2006年にマウスでの作製を報告し、12年にこの研究でノーベル医学・生理学賞を受賞した。
国は13年からの10年間で総額1100億円を投じ、医療での実用化研究を後押ししてきた。
今回、実用化の対象となった疾患以外でも、1型糖尿病、卵巣がんなどを対象に、再生医療等製品としての製造販売の承認を目指した臨床試験が国内で進む。
iPS細胞の発見という大きな成果が、20年を経て医療現場で花開こうとしているのは喜ばしい。
ただ、薬価は高額でリハートは1千万円以上と想定される。対応可能な医療機関も限られる見込みであるなど課題は残る。望む患者が誰でも治療を受けられる環境整備を、国も急がねばならない。

