内需不足による経済成長の減速を認めたと言える。にもかかわらず、国防費は高水準を維持し、軍拡路線を続けている。日本を含む東アジアの緊張が一層高まりかねず、懸念される。

 中国の国会に当たる全国人民代表大会が北京で開かれている。

 政府活動報告で、2026年の国内総生産(GDP)成長率目標を「4・5~5・0%」に設定するとし、25年の目標「5・0%前後」から引き下げた。

 不動産不況は出口が見えない。消費低迷は深刻で、デフレ圧力に直面している。習近平指導部が、現実的な目標設定に切り替えたのはやむを得ない。

 中期経済目標「5カ年計画」で、1人当たりのGDPは、35年までに20年の2倍とすると明記した。達成には、今後10年で年平均4・2%の成長が必要となるが、ハードルは決して低くないだろう。

 こうした中で力を注ぐのが、人工知能(AI)やロボット、宇宙といった分野の科学技術振興だ。「ハイテク強国」として経済・軍事両面で飛躍を狙う。

 世界シェアの大半を握るレアアースのほか希少金属では、「競争上の優位性を高める」方針を示した。外交カードとして活用するため、資源管理を一段と厳しくするとみられる。

 積極的な財政政策で景気を下支えする。しかし、膨大な国防費が足かせになるのではないか。

 国防費は26年予算案で、前年比7%増の1兆9095億元(約43兆4千億円)を計上した。日本の防衛費の約4・8倍に当たる。

 伸び率7%台は5年連続で、実戦能力向上を図る姿勢を鮮明に打ち出した。支出項目が明示されず、透明性を欠いていることも周辺国に不安を与えている。

 台湾に対しては、活動報告で「台湾独立分裂勢力に断固として打撃を与える」とし、昨年の「断固反対」から表現を強めた。

 武力による威圧は、摩擦を生むばかりである。

 王毅外相は記者会見で、台湾有事が日本の存立危機事態になり得るとした高市早苗首相の国会答弁を巡り、「日本が干渉する資格はあるのか」と強く非難した。

 中国政府は先月には、防衛関連企業を狙い撃ちとした輸出規制強化に踏み切った。

 日中両国の関係改善に向けて、打開策が一向に見つからないことは、残念でならない。

 一方、王氏は友好国であるイランやベネズエラを攻撃した米国に対し、関係安定に向け対話を続ける方針を示した。

 今月末に見込まれるトランプ米大統領の訪中を実現させ、台湾問題や貿易不均衡を巡る米中衝突を回避したい思惑があるのだろう。

 中国は、米国にイランへの軍事行動中止を強く訴え、大国としての役割を果たすよう求めたい。