空も海も青く澄み渡る新潟県の粟島。陽光を浴びて輝く海面のはるか先に本土が見える。粟島浦村は、東京電力柏崎刈羽原発から125キロ以上離れ、県内では原発から最も遠い自治体だ。しかし、ひとたび原発事故が起きた時、観光や漁業をなりわいにする島にとって、その距離は「遠く離れている」とは言えなくなる。

 6月下旬の昼下がり、夏の書き入れ時前の島は、カモメの鳴き声だけが聞こえるような平穏な時間が流れていた。宿が立ち並ぶ通りを歩いていると、潮風に乗って海の幸の香りが漂ってきた。「今朝、磯で取ってきたんだ」。丸々としたタコを掲げて見せながら、旅館を営む男性(68)が道路に面した調理場から顔を出した。

 参院選に向...

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