【2021/8/10公開】

 うだるような暑さが続く新潟県内。熱中症による救急搬送が増えている中、新潟日報社の「もっとあなたに特別報道班(モア特)」には、家族を心配する読者から「エアコンをつけたがらない高齢の両親にどう呼び掛けたらいい?」との質問が寄せられた。「体が冷えて苦手」「昔はエアコンなんてなかったのだから大丈夫」と使用を拒む高齢者は多いようだ。高齢者に理解してもらい、熱中症を防ぐ方法を専門家に尋ねた。

 気象庁などによる「熱中症警戒アラート」が連日発令され、県内では1日までの1週間に熱中症の症状で106人(消防庁調べ)が救急搬送されている。このうち約6割が65歳以上だ。

 高齢者はなぜ熱中症になりやすいのだろう。新潟市中央区の新潟産業保健総合支援センター所長の興梠建郎(こうろ・たつろう)医師(75)によると、「高齢者は暑さを感じるセンサーが鈍くなっているため」だという。人は暑いと汗をかいて体温を下げようとするが、加齢で暑さを感じる神経の機能が低下すると汗をかきづらく、体の中に熱がたまってしまう。

 高齢者がエアコンを嫌がるのも体温調節機能の低下が原因。冷気で体が冷えすぎてしまい、不快に感じる。興梠医師が以前勤務した病院でも「待合室が寒い」と独断でドアを開け放った高齢患者がいたという。

 高齢者にエアコンを使うように促す「魔法の一言」はないものか。興梠医師は「エアコンを使わずに室温が上がると危険。丁寧に説明して、自分の体の状態を理解してもらうしかないのでは」と話す。

 一方、熱中症対策には、脱水状態を防ぐことも重要だ。体内水分量は、64歳以下の成人が約60%であるのに対し、高齢者は50%ほどと少ない。喉の渇きも感じにくいため、汗をかく夏は脱水状態になりやすい。

 本人に自覚がなくても、脱水状態かどうかをチェックするには、腕などの皮膚をつまむといいという。つまみ上げた形状が元に戻るまで3秒以上かかる場合は脱水症状が進んでいるサインだ。興梠医師は「時間を決めて、小まめに経口補水液などで水分を取ることが大事。胃腸の機能が落ちている場合は冷やすと吸収が遅れるので、常温で飲むのがいい」と勧める。

 また、塩分が不足すると、熱中症の初期症状である筋肉のけいれんが起きる。興梠医師は「高血圧による制限がなければ、適度な塩分補給も必要。夏にナス漬けを食べる習慣は理にかなっている」と話した。