
「たぬきを捕獲しよう」。取材途中に訪れた胎内市の道の駅胎内で、こんなキャッチコピーのポスターを見かけた。よく見てみると菓子店の紹介。「たぬき」とはタヌキをモチーフにしたケーキで、近年は交流サイト(SNS)で全国的に話題となっている。しかし、スイーツの多様化や製造する店の減少などで数を減らしているようだ。県内の菓子店などで、「生息状況」を調べた。(新発田総局・小柳香葉子)
ポスターは卯月堂菓子舗(胎内市)のもの。50年以上前からたぬきケーキを販売している老舗だ。店主の齋藤長彦さん(55)は「亡くなった父が作り始めた」と話す。ロールケーキの上にバタークリームを盛って顔部分を作り、チョコレートをコーティング。目の部分だけチョコを取り、白いバタークリームの上にチョコの黒目を入れると完成だ。
今はバタークリームの菓子は減ってきているが、父の有喜男さんはバタークリームにこだわりがあった。長彦さんは父の思いを継ぎ、作り方をずっと変えていない。近年はSNSを見て訪れる若い人もおり、「これからも変わらずに作っていきたい」と目を細めた。
新規参入した店もある。新潟市西蒲区岩室温泉の小冨士屋は、店主の妻の武藤真由美さん(55)が「子どもの頃に食べたたぬきケーキをまた食べたい」と、娘で洋菓子担当の杉山ひとみさん(29)に依頼。2021年に商品化した。土台はマドレーヌ。杉山さんは「顔をかわいくすることにこだわった」という。
新潟市東区の「スイーツ エスカリエ」では22年から販売する。オーナーの金子智巳さん(55)が「昔、地元のケーキ店にあったたぬきケーキを復活させたい」と始めた。ムースなどを使っており、たぬきケーキを担当する妻の康子さん(57)は、ムースの材料を定期的に変えているといい「味だけでなく、たぬきの表情(顔つき)も楽しんでほしい」と話した。
◆なぜ「たぬき」? 昭和初期からSNSの時代まで
SNSで全国のたぬきケーキを...