
岸田文雄首相(左上)、金正恩朝鮮労働党総書記(右上)、拉致被害者横田めぐみさんの家族(下)のコラージュ
2002年9月の日朝首脳会談から半月後、日本政府調査団が平壌に入った。北朝鮮が生存を明らかにした5人の本人確認と、「死亡」とした8人の真相究明が目的だった。
北朝鮮は、横田めぐみさん=失踪当時(13)=が「1993年3月に自殺した」などと口頭で説明し、調査団の求める「証拠」を示すことはなかった。
帰国前夜、調査団長の斎木昭隆・外務省アジア大洋州局参事官は北朝鮮外務省の馬哲洙(マチョルス)局長に、証拠書類もなしに「死亡」は受け入れられないと伝えた。馬氏は部下を呼び、被害者の死亡証明書を出した。だが、朝鮮語のできるメンバーが一見して首をかしげる内容だった。「いいかげんな書類を出すな」。斎木氏が不...
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