有本恵子さん
有本恵子さん
トランプ米大統領から有本明弘さんに届いたメッセージを手に面会に臨む拉致被害者有本恵子さんの姉昌子さん(左)=10月28日、東京・元赤坂の迎賓館

 北朝鮮による拉致1970~80年代、北朝鮮が日本人を連れ去る国際犯罪を重ねた。工作員の教育などが目的とされる。2002年の日朝首脳会談で金正日総書記が拉致を認めて謝罪。被害者5人が帰国し、8人は「死亡」とされた。日本政府認定の被害者は計17人で、北朝鮮は4人を「未入国」と主張している。日本側は説明に不審な点が多いとして受け入れず、交渉は停滞している。被害者5人が帰国して23年。被害者の救出は進まず、高齢化で被害者家族が相次いで亡くなり、未帰国の政府認定被害者の親世代で存命なのは新潟市で拉致された横田めぐみさん1977年11月15日、新潟市立寄居中学1年の時の下校中に失踪。2002年9月の日朝首脳会談で北朝鮮は拉致を認めた。北朝鮮はめぐみさんは「死亡」したとして04年に「遺骨」を出したが、DNA鑑定で別人のものと判明。北朝鮮の説明などに不自然な点が多く、日本政府は生存を前提に再調査を求めているが、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」としている。=失踪当時(13)=の母早紀江さん(89)一人となった。代替わりが進み、親世代から活動を引き継いだきょうだいや子ども世代は強い覚悟と、長い年月がたっても解決しないいら立ちを抱える。親世代の願いを胸に、懸命に世論に訴える家族の姿を追う。(4回続きの1)

 「You will win(あなたはきっと勝つ)」

 10月28日、トランプ米大統領との面会に臨んだ、被害者有本恵子さん=失踪当時(23)=の姉妹の手に、1通の手紙があった。トランプ氏直筆のメッセージだ。英文で「あなたのために一生懸命努力している」と書かれていた。

 2019年6月、恵子さんの父明弘さん=25年死去=に届いたもので、有本家の心の支えとなっている。明弘さんの思いを胸に、膠着する拉致問題が動き出すよう後押ししてほしいと持参した。

 拉致被害者家族会は17年と19年、当時大統領1期目だったトランプ氏と面会。明弘さんは面会の際、自身の思いを書いた手紙を米国側に渡していた。日本単独で北朝鮮との関係を動かせないでいる中、明弘さんは...

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