スマホ教室の風景。デジタル化が急速に進む中、高齢者ら「デジタル弱者」への目配りも求められている=長岡市
スマホ教室の風景。デジタル化が急速に進む中、高齢者ら「デジタル弱者」への目配りも求められている=長岡市

 急速に進む社会のデジタル化に戸惑う高齢者が増えている。新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っては、通信機器の操作に不慣れでネット予約ができない高齢者から不満の声が相次いだ。衆院選では、各党がデジタル化の一層の推進を公約に掲げる。「社会に取り残されないか」「デジタル弱者に支援を」-。高齢者の声は切実だ。

 「『友だち追加』の画面になりましたか」。長岡市で毎週土曜日に開かれるシニア向けスマホ教室。講師を務めるのは長岡高専の学生たちだ。有志で高齢者向けITサポート企業「雷神」を立ち上げ、無料通信アプリLINE(ライン)やパソコンの使い方などを指導する。

 「雷神」共同代表の女子学生(20)は「専門知識を生かし、高齢者一人一人に寄り添ったサポートをしたい」と強調する。

 参加した同市の女性(77)は「スーパーもセルフレジが増え、ついていけないお年寄りがたくさんいる。デジタル化が進み、生活しにくくなっている」と打ち明ける。

 デジタルが社会インフラの一つとなり、生活の隅々に浸透する。電子マネーも普及し、医療機関の予約やチケットの申し込みでもオンライン手続きが増えた。回覧板の代わりにメールで情報を流す自治会もある。しかし、使い方が分からないためスマートフォンなどを持っていないという高齢者も多い。

 特にワクチンのネット予約は「デジタル弱者」の存在を浮き彫りにした。接種予約では、電話や直接申し込みに行く方法のほか、ネットでも受け付けていた。パソコンやスマホを持っていない新潟市西蒲区の女性(83)は5月末、個別接種の予約で近所のクリニックに6時間並んだ。「駐車場にはあふれんばかりの高齢者がいた。体力的にとてもきつかった」。政治が高齢者に冷たいとも感じたという。

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 菅義偉前首相はデジタル改革を推し進めた。デジタル庁を創設したほか、小中学生に1人1台の端末を配る「GIGAスクール構想」を進め、今春にほぼ全ての地域で配備を終えた。

 デジタル化の恩恵を実感する人も多い。2人の子をプログラミング教室に通わせる新潟市西区の会社員女性(44)は「地図が覚えられるゲームなどがあり、タブレットを使って自ら進んで勉強している。必要な情報を選ぶ力が子どものうちから身に付くのはいいこと」と語る。

 5月実施の全国学力テストのアンケートでは、本県小中学生の9割超がICT(情報通信技術)機器は勉強に役立つと回答。新潟市の小学校長からは「授業の進め方の選択肢が増え、子どもたちの思考の幅が広がった」との声が上がる。

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 一方で、若い世代と高齢者との「情報格差」が課題になっている。岸田文雄首相は、地方のデジタル化を進める「デジタル田園都市国家構想」を打ち出しつつ、「通信機器に不慣れな方を取り残さない優しいデジタル化」も強調する。立憲民主党も「誰ひとり取り残されないデジタル社会」を目指し、情報格差の最小化などを重点政策に掲げた。

 ただ高齢者の不安は拭えない。IT支援を行う「雷神」の細木さんは「『高齢者のデジタル活用は難しい』と決めつけるべきではない」と指摘し、「高齢者がITを学べる環境を整備しなければ、ますます格差は拡大する」と訴える。

 同じく共同代表の男性(51)は国に対し、「民間と行政が連携してパソコン教室を開くなど、高齢者のITサポートができるような制度をつくってほしい」と注文した。