衆院選序盤の10月下旬、新潟6区の候補、自民党新潟県連会長、高鳥修一の街頭演説会場は熱気に包まれていた。保守層に抜群の人気を誇る元首相、安倍晋三が聴衆にグータッチをして回り始めると、司会者が突然マイクで呼び掛けた。

 「花角英世知事も来年選挙でございます」

 高鳥の応援に駆けつけた花角は、促されるがまま一人一人と拳を突き合わせて回った。約7カ月後に訪れるであろう知事選を先取りするような光景だった。

 衆院選を終え、各党の関心は来年6月までに行われる知事選に移る。ただ、花角はいまだ去就を表明していない。

 そんな中での出馬が決まったかのような発言。司会を務めた県議の楡井辰雄は「本人が言わないから、回りが言わないと」と語る。

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 2018年の知事選で花角は「県民党」を掲げ、野党統一候補に競り勝った。この選挙戦を陰で支えた自民県連と公明党県本部は、花角再選出馬を規定路線とする。しかし、肝心の花角の本意を量りかねている。

 「えぇ? 早いですよ」

 衆院選前、花角に面会した自民県連幹事長の小野峯生が年内に態度表明してはどうかと水を向けると、こう答えたという。

 花角の態度表明が来年になれば、知事選までの準備期間は半年もない。

 「なるべく平和裏に花角氏に職を継続してほしい」と話す小野。前回選のように国政与野党が対決する激戦に持ち込みたくないとの思いがにじむ。

 だが、衆院選県内小選挙区で野党勢が勝ち越し、県連内の警戒レベルが上昇。「勢いを増した野党は知事選に候補を立てるはずだ」などの臆測が飛び交う。

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 一方、今回共闘を組んだ立憲民主党、共産党など野党勢力が再び知事選で結束するかは見通せない。

 共産県委員会委員長の樋渡士自夫は「これだけ勝っておいて、白旗というのはない。ただ共産独自の候補はあり得ない」と共闘の枠組みでの主戦論を掲げる。

 立民は候補を擁立するかどうか現段階では未定だ。花角県政の検証作業を続けており、県連幹事長の大渕健は「これと決めたものはない。あらゆる選択肢がある」と話すにとどまる。

 立民県連の判断は、最大の支持団体、連合新潟の動向にも左右されそうだ。連合は内部に花角県政を評価する声もあり、花角の対立候補擁立には積極的に関わらない可能性もある。

 ただ、立民にとって「花角支持」は自民との相乗りを意味する。直後の政治決戦、参院選での対決に響くのは必至だ。

 衆院選が幕を閉じ、花角を巡る綱引きが静かに始まった。衆院選の本当の勝者は誰だったのか。結論は知事選と、その後に控える参院選に持ち越された。(敬称略)

=おわり=

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