午前8時ごろ、漁から戻った漁港で、仲間に指示を出す後藤繁紀さん=佐渡市白瀬
午前8時ごろ、漁から戻った漁港で、仲間に指示を出す後藤繁紀さん=佐渡市白瀬

 政治の力への期待を込めて、新潟県内各地域の実情や住民の思いを伝える衆院選連載「知ってほしい」。今回のテーマは「島の漁業」です。

 クロマグロや寒ブリ、カキ養殖など、水産資源が豊富な新潟県佐渡市では、高齢化や後継者不足で漁業従事者が減少している。市内の漁業従事者者の数は2018年時点で1009人と、5年間で約300人減った。今年も寒ブリ漁のシーズンが始まった加茂水産定置網組合で大船頭を務める後藤繁紀さん(52)は「漁業の現場に人手が足りていない」と危機感を持つ。

 旧両津高校水産科を卒業。一度は就職した後、29歳で地元の定置網組合へ入った。今は白瀬漁港から約1キロの沖で寒ブリを中心とした定置網漁を行い、責任者として約30人をまとめる。約20年前は45人ほどで操業していたという。「魚を取るだけでなく、網や道具のメンテナンスなど仕事は多い。持続するには人が要る」と話す。

 現在、同組合には20代以下が7人いる。島内では若い世代の割合が高い地域だという。年の近い先輩が後輩に教える場面も多く、定着には同世代の存在が大事だと感じている。

 漁業に限らず、若者が地元に戻らないことは、島全体の課題になっている。市では19年に相談窓口「水産業雇用促進センター」を設置。窓口を通して年間約10人の就業につなげたものの、市内の新規就業者は年間約30人にとどまる。同市の人口は毎年約千人減っており、人口減の加速は止まらない。「今の20代が自分ぐらいの年になるころ、漁がどうなっているのか…」。未来を描くのは難しい。

 両津高の水産科は1997年度で閉科した。現在、市内に水産業を学ぶ学校はない。「せっかく海に囲まれた島なのに。こういう仕事があると知ることができたら変わるかもしれない」と教育の変化を望む。

 気に掛かるのは国が示す漁獲規制の拡大だ。水産庁は2020年、ブリやマダイ、ヒラメなど10種以上の漁獲量規制を検討する方針を示した。資源の枯渇を防ぐ目的だが、制限の魚種が拡大すれば中小規模の沿岸漁業に大きな影響が出る。「追うのではなく魚が入るのを待つ定置網漁は、環境に優しい漁。それでも制限されれば打撃は大きい」と不安を語る。

 新型コロナウイルスの影響で全国的に飲食店などの需要が減ったことから、昨年の寒ブリの価格は3分の1程度まで落ち込んだ。今年は少しでも上向くことを期待する。

 漁業のやりがいは大漁の日の喜びだ。成果は給料にも表れる。また、自営だけでなく、定置網組合などの雇用形態もある。仕事の面白さや実態をどう届けたらいいのか。広く発信する施策が必要だ、との思いを募らせている。

(佐渡総局・中山朝子)

◎就業者増やす施策を

後藤繁紀さんの話 漁業従事者が減少しており、就業者を増やす施策が必要だ。漁獲量制限の拡大は中小規模の沿岸漁業者への打撃が大きく、現場の声を聞いてほしい。新規就業者の支援に加え、魚介類の消費量拡大や漁業の魅力を若い世代まで広く周知することを求めたい。