かつて水田だった畑で、ブロッコリーを収穫する中村穣さん=上越市柿崎区
かつて水田だった畑で、ブロッコリーを収穫する中村穣さん=上越市柿崎区

 政治の力への期待を込めて、新潟県内各地域の実情や住民の思いを伝える衆院選連載「知ってほしい」。今回のテーマは「大雪被害」です。

 上越市柿崎区の山あいにある水田地帯の一角で、丸々と育った深緑色のブロッコリーが収穫の時を待っていた。「今年はハウスがないから、ブロッコリーは露地栽培で秋で終わりになる」と同区の農業中村穣さん(31)。包丁で根元から切り取り、余分な葉を払うと、次々とかごに入れた。

 昨冬の上越市は断続的にドカ雪に見舞われた。1月8日には平野部の高田地区で24時間降雪量が1メートルを超え、同11日には最深積雪が約2メートル50センチに達し、市民生活がまひした。農業分野でも、ビニールハウスを中心に農業用施設376棟が全壊するなどの被害が出た。

 中村さんの畑でも園芸作物用のハウス3棟が全壊した。「ハウス周りを除雪して備えていたが、予想を超えた降雪だった。丸1日かかってたどり着いたら、ハウスは既につぶれていた」と振り返る。

 出荷間近だったブロッコリーは全滅。毎年、春から夏にかけてハウス栽培していたトマトの作付けを諦め、今年は75アールの畑で枝豆とブロッコリーの露地栽培に注力することにした。

 被災当初はハウス再建を検討した。しかし、大雪に耐えるハウスを造るには高い骨材を使う。質の高い作物を安定して出荷するには、温度や水などを管理する最新設備も必要になる。

 「全てそろえるとなると相当な額になる」と中村さん。「国の補助金を使えても再建のために借金をすることになる。元を取れるだけの収益が出るか見通せなかった」と話す。

 中村さんのように経営状況と照らし合わせ、栽培作物や生産規模などを見直して、雪害からの復旧を試みた農業者は少なくない。

 市農政課によると、大雪を受けて、農業用ハウスなどの復旧費を補助する国の支援事業に申請したのは、被害を届け出た203の農業経営体のうち65経営体で、約3割にとどまった。同課は「耕作面積や販売金額の拡大といった要件に該当せず、申請を見送ったのではないか」とみる。

 上越市は耕地面積の94%を水田が占める水稲中心の土地だ。一方で、コメの消費量は減少傾向にあり、米価は下落している。対策として、主食用米を飼料用や米粉用のコメに転換し、野菜などの高収益作物などとの複合経営を進める動きが出ている。

 水稲農家に生まれた中村さんも親元で就農した8年前から、野菜の栽培に取り組む。畑のほとんどはかつては水田で、保水力が高い粘土質の土は畑作に適した水はけがよい土ではない。「土作りにはずっと苦労している。畑作への転換を促すためにも、土壌を改良するための基盤整備が重要だ」と強調する。

 耕作放棄地を何とかしたいとの思いから故郷に戻った。「コメで続かないなら、野菜で。農業を次世代につなげる仕組みを作りたい」。農業で活気づく地域の復活を目標に、前を向く。

(上越支社・鷲頭泰子)

◎基盤整備にも支援を

中村穣さんの話 水はけの良い土があってこそ、水稲から園芸作物への転換を促進できると考える。しかし、暗きょ設置や排水路の拡張工事には多額の費用がかかり、農家単体では実現が難しい。ランニングコストの支援だけでなく、転換に向けた基盤整備にも前向きに取り組んでほしい。