ことし2月にITベンチャーを起業した長岡技術科学大大学院の片岡翔太郎さん=28日、長岡市上富岡町
ことし2月にITベンチャーを起業した長岡技術科学大大学院の片岡翔太郎さん=28日、長岡市上富岡町

 東京一極集中、若者の流出-。地方が抱える課題の解決策として、各党は「デジタル・IT」の促進を公約に掲げる。実際に、新潟県内でITベンチャーを起業した学生や、東京からUターンした起業家らは、地方創生に向けたIT活用が急務だと訴える。ただ政治サイドの理解不足や、具体的な施策が見えないことへの危機感も強い。候補者が地方創生に向けたIT活用の道筋をどう描いているのか。関係者は注目している。

 長岡技術科学大大学院の片岡翔太郎さん(23)はことし2月、中小製造業者向けにAIを活用する企業「マヨラボ」を立ち上げた。設計図のデータなどをデジタル化し、業務の効率化や技術者の技能伝承に役立てられるとする。

 ITによる地方創生について、片岡さんは起業のしやすさやテレワークなどの利点を説明。「ITは起業の初期投資が小さく済む。東京にいなくても仕事ができるという点でもメリットは大きい」と語る。

 衆院選で自民党は地方からデジタル化を進める成長戦略「デジタル田園都市国家構想」を掲げる。野党各党もAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)などの分野に力を入れるとしており、地方の課題解決につなげようとする。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、テレワークやワーケーションといった新しい働き方や、デジタル化による企業の事業変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」も加速する。デジタルの力は社会・経済を大きく変えつつあり、地方創生への活用にも期待が高まる。

 だからこそ、片岡さんは東京一極集中を打破するための施策が重要だと力説する。「長岡で学んでも就職は東京、という雰囲気がある。結局、ITの仕事は東京が多い。企業移転や地方での起業をさらに後押しする税制優遇などの措置が必要ではないか」と話す。

 片岡さんの指導教員で、マヨラボ副社長でもある長岡技科大の野中尋史准教授(40)は、政治家のデジタル・リテラシー(知識や判断力)向上が重要だと指摘する。

 海外での好例として挙げるのが、台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏だ。IT企業を立ち上げ、自ら第一線のプログラマーとして活躍してきた。「日本の政治家にも、簡単なプログラミングはできるくらいに勉強していただきたい。真に地方創生のためになるデジタル政策の議論につながるはずだ」とする。

 東京でITベンチャーを立ち上げた後、出身地である長岡市にUターンした佐藤傑さん(47)も「会社が東京になければいけないという概念は崩れた」と語る。2020年、市内でAI開発「NiZA(ニザ)」を起業。県内中小業者でのDX化支援事業などを展開する。

 「生まれ故郷をかっこいい町にしたかった」との思いから、Uターンした佐藤さんは「地方は高齢化など課題が多く、もっと便利にしないといけない。だからこそデジタルと地方創生の親和性は高い」と強調する。

 具体的には、国が積極的に公的なアプリ開発などのIT事業を地方へと分配することを提案する。「地方の企業同士が競争入札したり、企業連合体を作って共同受注したりしてもいい。そのためには、国の側がITをしっかり理解することが重要だ」とした。