11月9日午後4時過ぎに新潟市役所などに問い合わせが相次いだ「謎の揺れ」。新潟日報社にも読者から照会があった。「もっとあなたに特別報道班」(もあ特)が揺れの原因を探った。

 起きた事柄を確認すると、ツイッター上で新潟市を中心に「地震のような揺れがあった」などと多数投稿されていた。新潟日報社に連絡をくれた新潟市東区の浅井栄山さん(80)は「9日午後4時ごろ、自宅でテレビを見ていたらガタガタと戸が揺れ、家がミシミシと鳴った。震度3くらいに感じた」と話す。

 しかし、新潟地方気象台はこの時間に新潟県内で地震を観測していない。地震でなければ、空気の振動で揺れた可能性が浮上する。火山が噴火すると、空気が急激に圧力変化し振動する「空振」がある=図参照=。

 新潟県の活火山には糸魚川市と妙高市にまたがる焼山があるが、気象台は「特段の火山活動は観測されていない」という。糸魚川市のフォッサマグナミュージアムは「市内で窓が揺れたなどの話はない」とした。

 次の可能性としては、飛行機が超音速で飛ぶことで発生する衝撃波「ソニックブーム」だ。9日午後4時〜4時30分に超音速の飛行機が新潟県上空を飛んでいないかを探った。

 国土交通省新潟空港事務所は航空機の安全な離着陸のため、空港を中心に半径64〜80キロメートル、高度4200メートルの空域をレーダーで観測している。対象の時間帯に「超音速の飛行機は確認していない」。

 4200メートルを超える高高度は、埼玉県にある国交省東京航空交通管制部が航空管制を担当する。同部は「超音速の飛行機の記録はない」としたが、「パイロットが管制用の電波を発信していないこともある。レーダーに映らない可能性はある」と話す。

 超音速の飛行機といえば戦闘機だ。可能性はゼロではなさそうだ。防衛省に問い合わせると「航空自衛隊の戦闘機が新潟県の上空を飛ぶことは通常ない。この日も飛んでいない」と確認できた。レーダー基地がある航空自衛隊佐渡分屯基地は「音速を超える自衛隊機は確認していない。それ以外は回答できる立場にない」だった。

 自衛隊でなければ米軍機だ。東京・横田基地にある在日米軍司令部広報部に尋ねるとメールで返答があった。「米軍と自衛隊は合同演習『キーンソード』を日本周辺海域で実施しているが、ご指摘の揺れと米軍の作戦に相関関係は見つかっていない」とした。

 取材班が「超音速の米軍機が新潟県上空を飛んでいたか」と再質問すると、「米軍機が通過した事実はない」と明確に否定した。

 結局、原因にはたどり着けなかった。「謎の揺れ」の謎は深まるばかりだ。

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