「佐渡島の金山」の世界遺産国内推薦を末松信介文部科学相に要望した後、取材に応じる花角英世知事(中央)ら=7日、東京・霞が関
「佐渡島の金山」の世界遺産国内推薦を末松信介文部科学相に要望した後、取材に応じる花角英世知事(中央)ら=7日、東京・霞が関

 国の文化審議会が世界文化遺産の国内推薦候補に「佐渡島(さど)の金山」を選んだものの、政府が「総合的な検討を行う」と曖昧な説明を続けていることに、新潟県関係者が不満と危機感を募らせている。県と佐渡市が目指す2023年の登録には、政府が2月1日までに国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦書を提出しなければならない。地元関係者は18日にも要望活動を行う予定で国に提出を迫るが、具体的な説明がないまま「時間切れ」となる懸念も高まる。

 「総合的な検討とはどういう内容なのか説明してもらいたい」。今月7日、東京・霞が関の文部科学省。花角英世知事や佐渡市の渡辺竜五市長らは向き合った末松信介文科相に求めた。

 末松文科相の返答は「今から総合的に検討するところだ」。おうむ返しのような答えに落胆が広がった。

 「総合的な検討」とは、昨年末に文化審が佐渡島の金山を国内推薦候補に選定した際に、文化庁が発表した異例の一文を指す。

 「文化審による国内推薦候補の選定は推薦の決定ではなく、政府内で総合的な検討を行う」。文化審の答申に添える形で発表され、関係者に波紋を広げた。

 通例であれば、文化審の選定通りに政府としての推薦を閣議了解し、ユネスコに推薦書を提出する。文化審の選定通りに政府が推薦しなかったのは、国内で競合する世界自然遺産候補があったケースなどに限られる。今回のように競合相手がいないのに推薦が見送られれば極めて異例となる。

 政府が慎重になる背景には、佐渡金山で戦時中に朝鮮人労働者が働いていたことを巡る韓国の反発があるとみられる。関係者によると、外務省内で政府推薦に慎重論が根強いという。

 ただ、政府は、なぜ異例の経過をたどり、「総合的な検討」はいつ、誰が、どのように行うのかを明らかにしていない。

 佐渡市が地盤で経済産業副大臣を務める細田健一衆院議員(新潟2区)は、この文言が添えられた経緯や、総合的な検討の進め方について「(政府が)公に説明しなければ議論することもできない」といら立ちを募らせる。

 政府推薦には官邸の意向も焦点になるが、具体的な動きは見えない。5日の会見で政府対応を問われた松野博一官房長官は「詳細は文化庁にお尋ねいただきたい」と素っ気なく答えた。

 仮に推薦書の提出が見送られれば、文化審の答申は宙に浮く格好になる。文化庁の担当者は来年度以降の答申の扱いについて「仮定のことに答えるのは差し控える」と言葉を濁し、さらなる混迷も予想される。

 政府の姿勢に対し、県内では危機感が強まる。

 13日に県市長会、町村会と連名で早期推薦を決議。渡辺市長は取材に対し「できる限りのことをする」と語った。18日にも地元関係者が上京し、自民党国会議員らに働き掛ける予定だ。

 自民県連会長の高鳥修一衆院議員(比例北陸信越)は17日、自身のブログに「外務省、政府の姿勢が消極的だ。強い危機感を抱いている」と投稿。自身が代表世話人を務める保守系議員の議連を18日に開き、この問題を議論する予定だ。