世界文化遺産を思い浮かべたとき、輝かしい歴史の産物をイメージすることが多いのではないだろうか。だが、国家間の戦争や政争などを背景とした「影」を抱える遺跡は国内外を問わず存在する。世界遺産登録を目指す「佐渡島(さど)の金山」(新潟県佐渡市)でも、江戸時代に多くの人が過酷な労働を強いられた歴史がある。影をどう乗り越え、その先に価値を見いだすのか。長期企画「輝ける島へ」の今シリーズでは、広島の原爆ドームを皮切りに、影を抱える国内外の遺産を掘り下げ、世界遺産の真価を改めて見つめる。(敬称略)

西日を背に立つ世界遺産「原爆ドーム」。痛々しい姿をありのままに示すことで、惨禍を伝え続ける=広島市中区

 骨組みだけの天井、内部をさらけ出すれんがの壁、地面に飛び散ったがれき-。78年前以前の姿を、まったく想像する...

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