自転車は環境に優しく、健康増進にも役立つ。免許も不要で気軽に乗れる。だが、あくまでも車両である。対自動車では交通弱者だが、対人では強者になる。そのような意識を高めつつ、交通ルールを守って利用を促進したい。
自転車による交通違反について、警察庁が交通反則切符(青切符)の交付を可能にする制度変更を目指す方針を明らかにした。
現在は刑事処分の対象となる交通切符(赤切符)で対応しているが、実際に起訴されるケースは少ないなどの課題があった。
これに対して青切符は行政手続きとして反則金の納付を求めるもので、取り締まりの実効性が高まることにつながる。
7月1日から運転免許が不要になった電動キックボードも青切符の対象だ。
制度変更を目指す背景にあるのは、自転車の交通ルール違反の増加だ。警察庁によると、摘発件数は2013年に7193件だったが、22年は2万4549件と約3・4倍に増えている。
県内ではそれぞれ4件、5件と少ないが、東京など大都市では取り締まりを強化していることもあり違反が目立つ。
新型コロナウイルス禍に伴い、通勤や食事宅配サービスでの利用が増えていることも摘発件数の増加につながっているようだ。
信号無視や一時不停止、スマホを使いながらの運転など、自転車側にも違反があった重大事故も相次いでいる。事故を未然に防ぐための制度変更はやむを得まい。
反則金を適用する行為や金額、対象年齢などついては今後、警察庁の有識者会議で議論される。丁寧な議論で国民の納得が得られる制度にしてもらいたい。
気軽すぎて意識しにくいが、自転車は道路交通法上、軽車両に当たる。歩道を通行できる場合もあるが、歩行者優先で車道寄りを徐行しなければならない。
何より大事なのは、こうした認識を利用者一人一人がしっかり持つことだ。ヘルメットの装着や保険の加入も含め、警察庁は啓発活動にも力を入れてほしい。
自転車による事故や違反が起きる要因に、欧州などで整備が進んでいる自転車専用道路や専用レーンが日本では十分整っていないことがある。
車道は車が走っていて怖い、歩道は歩行者で混雑しているといった状況では、自転車が走る場所がない。専用道や専用レーンの整備が着実に進むことを期待したい。
最近は自転車を活用した地域活性化を目指す動きもある。
県内では佐渡市や南魚沼市、新潟市などがレース大会や観光ルート整備、シェアサイクルといった事業を手がけている。
地域振興の観点からも、ソフトとハードの両面で自転車を巡る環境整備を進めるべきだ。