次々に新しい手口が生まれ、深刻な被害が増えている。自分や家族がだまされることのないように対策を行いたい。警察は捜査に総力を挙げてほしい。

 警察庁によると、国内では今年、9月末までに暫定値で2万57件の特殊詐欺が認知され、被害額は約965億円に上る。認知件数、被害額ともに前年同期より大きく増えている。

 県警のまとめでは、今年は10月末までの特殊詐欺の被害額が暫定値で9億5436万円となり、既に過去の年間最高額を上回った。件数は222件だった。

 多くの被害が出ていることに驚く。手口が巧妙化しており、防ぐことも簡単ではなくなっている。

 従来は息子などをかたり、金を振り込むよう求める手口が多かったが、昨年から警察官などをかたって捜査名目で金をだまし取る「ニセ警察詐欺」が急増した。

 県内では今年の被害額の7割を超える約6億8千万円がニセ警察詐欺によるものだった。

 警察を名乗り「あなたに犯罪の容疑がかかっている」などと言った上で「逮捕されないために保釈保証金を支払う必要がある」「潔白を証明するために口座にある金を全て調べる」と迫る手口だ。

 口座にある全額の振り込みを指示するため、1件当たりの被害額が高額になりやすいという。

 警察庁は金銭に加え、ビデオ通話に誘導した上で、タトゥーがあるかどうか確認するとして、服を脱ぐよう求めるなど性的な被害を伴うケースもあるとしている。

 市民の警察への信頼を利用した悪質な手口で、許しがたい。

 警察は金銭を要求したり、ビデオ通話で取り調べをしたりすることはない。警察官からの連絡で不審に思ったら、一度通話を切って、警察相談専用電話(#9110)などにかけるようにしたい。

 近年は国際番号で電話をかけ、交流サイト(SNS)のやりとりへと誘導するケースが目立つ。

 海外発信の詐欺電話は国際電話の利用を休止することで防ぐことができる。別居する家族の電話も必要に応じて手続きしてほしい。

 懸念されるのは、近年、特殊詐欺の拠点が東南アジアなど海外に移っていることだ。

 SNSでつながる「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)」は秘匿性の高い通信アプリで連絡を取るため、実行役を摘発しても指示役にたどり着くのは困難だという。

 警察庁と警視庁は10月、匿流の捜査のため新体制を発足させた。

 全国から情報を集め、捜査員をフル活用して組織解体に追い込む考えだ。日本での被害が想定される海外の特殊詐欺拠点が現地当局に摘発された場合も、警視庁の捜査員らを派遣する。

 警察は特殊詐欺の被害から国民を守るために、捜査を徹底してもらいたい。