短期の利害の相違はあっても、長期では世界全体に影響が及ぶ問題だ。解決に向けた多国間の協調を早急に取り戻さねばならない。

 ブラジルで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)が、気候変動による災害に備える資金を2035年までに世界全体で3倍に増やすとする合意文書を採択し、閉幕した。

 争点だった「化石燃料からの脱却」や、脱却を具体化させる工程表の策定は欧州など80カ国以上の賛成を得たものの、産油国などが強く反対したため、合意書に記載されなかった。化石燃料に依存する日本も賛同しなかった。

 成果は乏しく、危機感を共有する難しさが鮮明となった格好だ。

 今年は、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」の採択から10年に当たる。

 協定で定めた、産業革命前からの平均気温上昇を1・5度に抑えるとの目標実現は見通せない。

 このままでは気温上昇は2・6度に及ぶとの予測もあり、気候変動に伴う海面上昇や猛暑といった影響は既に生活を脅かしている。

 一方、今回のCOP30で、国連は35年の温室効果ガス排出削減目標を9月末までに提出するよう求めていたが、期限を守った国は3割にとどまるなど、排出削減の強化に向かう勢いは弱い。

 地球温暖化を共通の課題と再認識し、各国が連携して立ち向かう必要がある。

 連携には、米国の姿勢が課題となる。米国のトランプ大統領は地球温暖化対策を「史上最大の詐欺」と主張し、第1次政権に続いてパリ協定からの離脱を表明した。

 脱炭素の取り組みに背を向ける米国の影響は大きい。

 10月には国際海事機関(IMO)が、大筋で合意していた国際海運の炭素課金導入の採決を、米国の猛反発を受けて1年先送りした。COP30にも米国は政府高官を派遣しなかった。

 COP30では、途上国向け支援の具体化を目指し、2年間の作業計画を策定することを決めたが、最大の支援国だった米国が不在のままでは、対策に必要な資金の確保も難航が予想される。

 実効性のある計画とするためにも米国に参加するよう、各国が粘り強く働きかける必要がある。

 日本はCOP30で、27年の国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会を誘致する考えを示した。

 科学者が議論し、温室効果ガスの量を評価する際の算定方法など、科学的根拠を示す場になる。結果は、各国が温暖化対策決定の重要な指針とする。

 この場で共有された科学的根拠を基に、日本から温暖化対策の必要性を発信することも可能だろう。さまざまなアプローチで、多国間で協議する基盤の再構築を急がなければならない。