選挙制度は、民意を政治に反映させるための原点である。見直しには慎重な議論が欠かせない。地方の意見を切り捨てるような変更には賛成できない。
自民党と日本維新の会は衆院議員定数の1割削減に向け、協議を始めた。削減のための法律施行から1年以内に結論を得る方針だ。
両党は10月に署名した連立政権合意書に「1割を目標に衆院議員定数を削減するため、2025年臨時国会に議員立法案を提出し、成立を目指す」と明記していた。
自維が少数与党であるため、12月17日までの今国会での関連法成立は見通せない。
衆院予算委員会で成立の見通しを問われた高市早苗首相も「容易に実現する目標とは考えていない」と認めた。
だが維新は、定数削減を連立の絶対条件に掲げ、現行の465の約1割に当たる50議席を比例代表から減らすべきだと主張する。
吉村洋文代表は「削減数を組み込んだ法案の提出が絶対だ」とこだわりを見せる。自民で浮上する、削減の方向性を定めるだけの「プログラム法」をけん制する。
政治家自らの「身を切る改革」を重視する維新の姿勢は理解できるが、削減による影響にも目を向けなければならない。
選挙制度は民主主義の根幹であるからだ。
議員減により、地方の声が国政に届きにくくなる懸念がある。
17年の小選挙区6減、比例4減の際も人口減が進む地方を中心に定数が削減された。自民内からも今回、「地方の定数がさらに少なくなる」との反発の声が上がる。
比例代表は、多様な民意を反映できる利点がある。その削減は、中小政党への打撃になりかねず、少数意見の切り捨てにつながる恐れもある。
野党が自維による拙速な協議を批判するのはもっともだ。
議員数を減らすと行政を監視する力が弱まったり、女性や若者が政治に参画する機会が狭まったりする弊害があるとの専門家の指摘にも、留意すべきだろう。
維新はさらに、一つの選挙区から複数の当選者が出る「中選挙区制」を導入するべきだとの主張を強めている。
しかし、かつての中選挙区制では、同じ政党の候補同士が競うこともあり、有権者へのサービス合戦が激化し、金権政治の土壌になるとの批判があった。
1988年に発覚したリクルート事件をはじめとする「政治とカネ」問題をきっかけに制度改革が叫ばれ、現在の小選挙区比例代表並立制に変更された。その教訓を忘れてはならない。
求められるのは、与野党の幅広い合意を得る丁寧な議論である。
選挙制度改革を政党のアピールや連立維持のために利用することがあってはならない。
