原発を動かすべきか否か。本県のこれからを左右する岐路の議論となる。県議それぞれが、どれだけ真摯(しんし)に県民世論と向き合えるかが問われる。

 県議会12月定例会が2日に開会し、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を容認する花角英世知事の判断についての議論が始まる。

 柏崎刈羽原発は全7基が2012年から停止している。県議会が知事の判断を信任すれば、11年の東日本大震災で福島第1原発事故を起こした東電が事故後初めて原発を再稼働させる公算が大きい。

 政府が掲げる原発活用路線へ進むか、立ち止まるか、今議会が最終判断の場となる。22日の会期末まで議論を尽くしてもらいたい。

 花角知事が11月21日の臨時会見で表明した再稼働容認の判断を巡っては、疑問が多い。

 県が2万人余を対象に行った県民意識調査では、再稼働への賛否は拮抗(きっこう)していた。「再稼働の条件は現状で整っていない」と考えている県民が約6割に上り、東電が運転することを心配だと考えている意見も約7割あった。

 懸念が根強い結果にもかかわらず、なぜ容認と判断したのか。

 容認に当たり避難道路の整備など7項目を国に求めたが、どの程度の対応を求めるのかも不確かだ。避難路の整備に着手するだけでは住民の安全は担保されない。

 知事は判断に当たり「議論の原点」だと語る福島を訪ね、福島第1原発を視察した。

 視察後、「事故の影響の大きさを実感した」と語った。それでもなお原発を是とするのであれば、その安全性について県民が納得できる説明が必要である。県民の安全安心を守れるか、掘り下げた議論がまだ不十分だ。

 県は、原発の安全対策に関する広報費用などを盛り込んだ予算案を、他の予算案と切り離して今議会に提出する。予算審議を通して知事判断の是非を問う形だ。

 知事はこれまで、自らの示した決断について「県民の意思を確認する」とし、「信を問う方法が責任の取り方として最も明確で重い」と繰り返してきた。

 知事選を想定しているかのような印象を与えていただけに、県議会に諮る方法に関しては批判もある。長岡市の磯田達伸市長は、方法について「本当に信を問うという形になるのか若干違和感を感じる」と疑問を呈した。

 議会に問う手法は、県民一人一人が意思を直接示す機会を奪うことになる。

 県議会最大会派の自民党県議団が知事判断を受け、早々に「信任」方針を決めたことは残念だ。

 信任ありきでなく、活発な議論を求めたい。それが県民の負託に応える道である。

 将来世代にも責任を負う判断機会となることを重く受け、慎重に審議してもらいたい。