離農に歯止めがかからない現状が浮き彫りになった。高齢世代に頼る状況も変わらない。食料の安定的な確保のため、担い手の減少を食い止める対策が求められる。
農林水産省が発表した2025年の農林業センサス(速報値)によると、本県の農業経営体数は3万3702で、20年の前回調査より9800、22・6%減った。
自営農業を主な仕事としている「基幹的農業従事者」は3万4541人で25・1%減少した。65歳以上は75%と横ばいで、平均年齢は前回と同じ68・9歳だった。
離農の要因として、農機や燃料、肥料などの高騰による採算悪化が挙げられる。農水省は近年の猛暑も一因と分析する。肉体的な負担が増えたことに加え、生産にも影響が出た。
全国の減少率も25・1%で、過去最大となった。本県の減少率は前回調査より1・1ポイント縮小した。
米価の上昇により、コメを作り続ける意欲を取り戻した農家がいたことで、離農者数が抑えられたとの指摘がある。
とはいえ、農業県の本県で、基幹的農業従事者がこの5年で2割も減ったことは憂慮すべきだ。
所得を見込むことができれば、農業を続ける人がいるといえる。離農を防ぐためにも、農家の収益力強化は不可欠だ。
収益力を上げる方法として国は農地の集約を進めてきた。
県内でも10ヘクタール以上の耕地面積を持つ経営体が増えている。耕地面積20ヘクタール以上の経営体が占める面積シェアは34・8%となった。
農地集約の仲介役である農地中間管理機構(農地バンク)が24年度に貸し出した県内の農地面積は過去最大の6664ヘクタールとなり、初めて目標を達成した。
集約化を進めるならば、農地バンクの活用を含め、さらなる施策が必要だ。
農水省は25年度補正予算で、農業の構造転換に取り組む構えだ。しかし、本県は県の財政難から、ほ場整備の新規受け付けを休止せざるを得なくなっており、取り残される懸念がある。
生産者が減って耕作放棄地が増え、国内生産能力が低下すれば、コメや野菜の価格高騰につながる。高市早苗首相が掲げる食料安全保障にとっても大きな危機だ。
政府は意欲のある生産者が農業を続けられるよう、支援をするべきだ。新規就農者を増やす取り組みも欠かせない。
石破茂前首相がコメの増産方針を示してから3カ月で、高市政権が「需要に応じた生産」へと切り替えたことで、現場には混乱が生じた。政府は先を見据えた政策を進めねばならない。
農地には、食料生産だけでなく、地域の環境を守り、災害を防ぐなど多面的な機能がある。地域の農業をどう守っていくのか、幅広く考える必要がある。
