登録決定から間もない7月30日、「史跡佐渡金山」の売店は国内外から訪れた観光客でにぎわっていた=佐渡市相川地区
登録決定から間もない7月30日、「史跡佐渡金山」の売店は国内外から訪れた観光客でにぎわっていた=佐渡市相川地区

 長年の悲願だった新潟県の佐渡金山の世界文化遺産1975年に発効した世界遺産条約に基づき、歴史的建造物や遺跡を対象にユネスコが人類共通の財産として登録する。国内では姫路城などが登録されている。世界遺産にはほかに、貴重な生態系などの自然遺産と、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産がある。登録の可否は世界遺産委員会が決める。登録がついに決まった。停滞する県勢回復の起爆剤としても期待される中、どう観光客を受け入れるのか。人口減と向き合いながら、先人が掘り起こしてきた価値を維持・活用し、未来へつなげていくことも求められる。登録はゴールではなく新たな取り組みの始まりだ。世界遺産の島の現状と課題を追う。=3回続きの1=

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 「佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」の世界文化遺産への登録決定から3日が経過した7月30日、佐渡市相川地区の観光施設「史跡佐渡金山」は夏休みで訪れた多くの観光客でにぎわった。売店の客足は途切れず、品薄になった土産物を棚に追加するスタッフの姿があった。運営会社「ゴールデン佐渡」の鈴木徹社長(62)は「在庫を備えていたが、思いのほか大勢に来ていただいている」と対応に追われた。

 自然や歴史、文化が豊かな佐渡は元々、新潟県を代表する観光地だ。世界遺産登録後、佐渡の来訪者数が現在の約50万人から、最大で118万人に達するとの日本政策投資銀行の試算がある。佐渡観光最盛期の1991年で約120万人。試算通りなら、数字の上では最盛期の勢いを取り戻すことになる。

 ただ、この30年で島の人口減少が進んだ。数を追う観光から脱却した、新たな島の姿を模索している。

 佐渡の人口は今、観光が最盛期だった1991年から3万人減り、5万人を切っている。約30年の間に旅行形態は団体から個人にシフト。近年は島内の宿泊施設の事業停止も続いた。レンタカーや宿泊施設の予約は、世界遺産登録前でも取れない時期があった。登録が決まった今、...

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