工事が続く金子勘三郎家住宅=7月28日、佐渡市西三川
工事が続く金子勘三郎家住宅=7月28日、佐渡市西三川

 長年の悲願だった新潟県の佐渡金山の世界文化遺産1975年に発効した世界遺産条約に基づき、歴史的建造物や遺跡を対象にユネスコが人類共通の財産として登録する。国内では姫路城などが登録されている。世界遺産にはほかに、貴重な生態系などの自然遺産と、文化と自然の要素を併せ持つ複合遺産がある。登録の可否は世界遺産委員会が決める。登録がついに決まった。停滞する県勢回復の起爆剤としても期待される中、どう観光客を受け入れるのか。人口減と向き合いながら、先人が掘り起こしてきた価値を維持・活用し、未来へつなげていくことも求められる。登録はゴールではなく新たな取り組みの始まりだ。世界遺産の島の現状と課題を追う。=3回続きの2=

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 「そこまで求めるのか」。国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会を控えた6月、「佐渡島(さど)の金山「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の産出量を誇った。金の採取から精錬までを手工業で行っていた時代の遺構が残っているのは、世界的に例が少ないとされる。」について国際記念物遺跡会議(イコモス)1965年に設立した国際非政府間組織(NGO)。文化財の保存、修復、再生などを行う。ICOMOS(イコモス)は「International Council on Monuments and Sites」の略語。ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関として、文化遺産に関する推薦資産の現地調査を担う。その内容を踏まえ、世界遺産委員会に対して評価結果を勧告する。勧告は「記載」(世界遺産一覧表に記載するもの)、「情報照会」(追加情報の提出を求めた上で次回以降に再審議するもの)、「記載延期」(より綿密な調査や推薦書の本質的な改定が必要なもの)、「不記載」(記載にふさわしくないもの)の4区分。本拠地はパリ。が出した勧告に、地元関係者は驚いた。

 その勧告とは「相川鶴子(つるし)金銀山の緩衝地帯の沖合への拡張」。景観を損ねる恐れがある洋上風力発電施設の建設を防ぐ目的が念頭にあるとみられる。しかし、洋上風力発電の具体的計画はない。佐渡市は「市景観計画」を変更して沖合まで拡張する対応をしたが、保全は遺跡以外の部分にも目が向けられているという厳しい世界標準が明らかとなった。

 世界遺産になると、保全の状況をユネスコに報告し続ける必要がある。今後は世界レベルでの遺産の保護が求められることになる。

 「登録は、自分たちが金山を守ると世界に約束したということ。改めて覚悟を持ってほしい」。佐渡市職員として...

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