吉田丈夫社長
吉田丈夫社長

 新潟県内企業で世代交代や代替わりが相次いでいる。先代の流儀を踏襲しつつも、若い感性で時代を見つめ、新たな領域にチャレンジし、県内経済に新風を吹き込む。他社などでの修業時代に何を学び、経営者として今、どのようにビジネスを展開しているのか。若きトップたちの視座を探った。(8回続きの1)

 設立60周年を迎えた農機販売の新潟クボタ(新潟市中央区)は2024年1月、社長の吉田至夫氏(72)が会長になり、長男で専務の丈夫氏(39)が社長に就いた。至夫氏が新たな市場を切り開いたコメ輸出やモンゴルでの農機販売などを引き継ぎ拡大を目指す。農業現場の変化も捉え、「農業新時代を創造し、市場をリードしたい」と意気込む。

 経営で心を砕いているのは「トップダウンの組織ではなく、社員一人一人が成長し、力を発揮できる企業にする」ことだ。ヒントになっているのが、大学卒業後に入社したIT大手のディー・エヌ・エー(DeNA、東京)での経験だ。DeNAは若い社員が多く、自由な社風が特徴で現場がアイデアを出し、形にしていくカルチャーがあった。

 「スピード感があり、会社の成長度合いもすごかった。数%の成長ではなく、縦軸が数百%といったグラフを書いていた」と振り返る。携帯電話が「ガラケー」からスマートフォンに変わり市場が変化していくことに若手が気づき、対応する力強さがあったという。

ディー・エヌ・エーの人事部時代の吉田丈夫氏=2010年、東京都内

 「時代の変化に気がつくこと、市場と向き合うこと...

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