もろ差し武器に快進撃
メキシコ大会の決戦前夜、寝床につくと不思議な夢を見た。故郷・黒埼(現新潟市西区)の田んぼで網を投げると300キロもの食用ガエルがかかった。
当時「日本レスリングの父」とも呼ばれた全日本協会の八田一朗会長から「夢の中でも勝て」と独特の精神論で鍛えられていた。勝利の暗示に感じた宗村宗二は、試合前に集まった記者たちに金メダル宣言をしてみせた。

宗村にとってメキシコは4年越しの夢だった。64年東京大会は代表選考の最終予選で優勝した。だが、2年前のアジア大会を制した藤田徳明も有力候補だった。合宿で時間無制限の試合が組まれたが決着はつかず、宗村は経験不足を理由に落選。客席から眺めた五輪で、宿敵の藤田は4...
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