
自身が採集したヤツマタモクの標本の前に立つ池森貴彦さん。海藻食の冊子も監修するなど食文化を伝える=1月21日、石川県能登町の県海洋漁業科学館
2024年1月の能登半島地震では、海の幸も大きな打撃を受けました。長期企画「碧のシグナル」の第3シリーズ「『海の森』紡ぐ縁」は、能登の海の豊かさを象徴する海藻を通し、被災地の現状、新潟県から応援する人らを追います。(6回続きの4)
「これはウミゾウメンですね。海女さんに『そうめんのように盛り付けて、つゆで食べるとおいしい』と言われ、やってみたら本当においしかった」
2024年12月、佐渡島と能登半島の水産関係者らが集まるシンポジウムが佐渡市内で催された。「海藻博士」として知られる石川県水産総合センター企画普及部長の池森貴彦さん(58)も演壇に立ち、能登で食べられている海藻の名前を次々と挙げながら、旬や味わい方について語った。
能登の海藻について調べ始めたのは、1997年のこと。島根県沖で1月2日、ロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」が沈没し、新潟県を含む日本海沿岸に重油が漂着した事故がきっかけだった。石川県沿岸部でも事故から1週間後に油が確認され、県職員らが環境調査を実施することになった。
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池森さんらによる4年間の調査は油の影響だけでなく、海藻の植生分布も解き明かした。特に岩礁域が広がる能登半島は、県内で確認された約200種をほぼ網羅していた。
能登の藻場はホンダワラ類やアラメ類が中心で、「全国で見ても豊か」と池森さん。海藻の食文化が発達し、いまでも30種類ほどを味わう。生のまま食べたり、乾燥させたものを戻して煮物にしたり。唐辛子を入れたみそで海藻をあえ、...
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