
出張輪島朝市の開店前、気持ちを一つにする道下睦美さん(右)、南谷良枝さん(右から2人目)ら=2月8日、新潟市中央区の古町ルフル広場
2024年1月の能登半島地震では、海の幸も大きな打撃を受けました。長期企画「碧のシグナル」の第3シリーズ「『海の森』紡ぐ縁」は、能登の海の豊かさを象徴する海藻を通し、被災地の現状、新潟県から応援する人らを追います。(6回続きの6)
大雪に見舞われた2月上旬の新潟市中央区。古町ルフル広場では「にいがた冬食の陣」に出店した石川県輪島市の女性たちの明るい声が響いていた。「おいしい塩辛ありますよ」「魚、見てってー」。店先には「がんばろう! 輪島朝市」と書かれたオレンジ色の旗がはためく。
輪島朝市は1200年以上の歴史があると伝わる。だが、2024年の能登半島地震に伴う火災で朝市通りのほとんどが焼けてしまった。いまは全国で出張朝市を開いており、新潟では今回が初の開催となった。
「もう商売できんかもしれんって思った」。30年近く朝市に立ち、海産物を商ってきた南谷良枝さん(49)は振り返る。地震前は母や姑、娘の美有(みゆ)さん(23)と店先に立ち、インターネットでの販売にも力を入れていた。
それが地震で、朝市通りでの商売に必要な道具を保管していた倉庫が倒壊。改装してから数年しかたっていない、自宅そばの加工所も被災した。地震の前年に5〜6トンを仕込んだ能登伝統の魚醬(ぎょしょう)「いしる」をはじめ、多くの「財産」を失った。
■ ■
地震前、朝市には能登で採れた海の幸をはじめ、青果や民芸品も並び、観光客や地元の人らでにぎわっていた。海藻や海産物を扱っていた店もいくつもあったが、店主らは被災し、海の復興もまだまだ。十分に仕入れられる状況ではない。
それでも、後ろばかり...
残り944文字(全文:1632文字)