
えごねりの製造の様子を見守る猪貝克浩さん(左)。原料には能登産のエゴノリも長く使ってきた=1月31日、長岡市新産2の猪貝
2024年1月の能登半島地震では、海の幸も大きな打撃を受けました。長期企画「碧のシグナル」の第3シリーズ「『海の森』紡ぐ縁」は、能登の海の豊かさを象徴する海藻を通し、被災地の現状、新潟県から応援する人らを追います。(6回続きの5)
海藻のエゴノリを煮溶かし、練り固めた新潟県でおなじみの「えごねり」。佐渡島では「いごねり」という。四角く切り分ける地域もあれば、薄く広げたものを丸め、細切りにする佐渡のような所も。酢みそを添えたり、薬味と一緒にいただいたりと、楽しみ方もさまざまだ。
えごねりの県内シェアがトップの食品製造「猪貝(いのかい)」(長岡市)は、年間3〜4トンのエゴノリを使う。1年を通じて製造ラインを動かしており、ことし1月末の寒い朝も、大鍋から湯気が立ちのぼり、磯の香りが満ちていた。
会長の猪貝克浩さん(68)は、産地によって粘り方が異なり、水加減も変わると感じている。主な産地の一つが石川県の能登半島。食べる習慣はあまりなくなったが、エゴノリ漁は続いている。能登産は「つるっとした仕上がりになりやすい」と猪貝さん。長年仕入れ、原料として用いてきた。
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新潟の味を支えてきた能登のエゴノリが2024年、ほとんど出回らなかった。
猪貝さんによると、もともと、エゴノリは年によって豊漁と不漁の波が激しかった。それでも「体感的には3年くらいの周期で、また採れる年が来ていた」と振り返る。
ここ数年は全国的な不漁で、そこに2024年の元日、能登半島地震が起き、...
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