佐渡潜水が人工魚礁に用いるツルアラメ。網状の基板に根のような部分を張り巡らせ、新たな株を生じさせる=2月15日、佐渡市白瀬
佐渡潜水が人工魚礁に用いるツルアラメ。網状の基板に根のような部分を張り巡らせ、新たな株を生じさせる=2月15日、佐渡市白瀬

 2024年1月の能登半島地震では、海の幸も大きな打撃を受けました。長期企画「碧のシグナル」の第3シリーズ「『海の森』紡ぐ縁」は、能登の海の豊かさを象徴する海藻を通し、被災地の現状、新潟県から応援する人らを追います。(6回続きの3)

 石川県の能登半島で「かじめ」と呼ばれる海藻のツルアラメは、佐渡島では「あらめ」という。炒め煮や、銀鮭の入った「あらめ巻き」が昔から親しまれてきた。

 「輪島で、かじめを増やす取り組みを進めようと思っています」。2024年の夏、「わじま海藻ラボ」(石川県輪島市)の石川竜子(りょうこ)さん(48)は、佐渡市で潜水工事や調査を手がける「佐渡潜水」会長、正司(しょうじ)正さん(67)に相談した。

 海女と一緒に海を調査してきた石川さんは、失われた海のなりわいを取り戻したいと思ってきた。「かじめは、サザエにとってすごくいい餌であると同時に、人が食べてもおいしい。海女さんたちも、どの海藻が増えてうれしいかっていったらかじめ」と語る。

 石川さんにとって正司さんは、新潟県職員時代に一緒に仕事をしただけでなく、「ダイビングの師匠」。そのつてをたどった。

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 正司さんは、島内でワカメやコンブの養殖に取り組んできた。ツルアラメを付け、アワビやナマコのすみかとする人工魚礁の設置も会社で手がけ、身近な海藻だった。

海で養殖しているワカメを引き揚げる正司正さん。春先にかけ、まだまだ大きく育っていく=2月15日、佐渡市黒姫沖

 能登の海には、特別な思い入れもあった。...

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