「この国の被ばくの歴史を忘れないで」と子どもたちに語りかけるアベノバ(左から3人目)。後ろには核爆発からわが子を守る母親の像「死よりも強し」が見える=2025年8月、カザフスタン・セメイ(撮影・小崎一記、共同)
 「この国の被ばくの歴史を忘れないで」と子どもたちに語りかけるアベノバ(左から3人目)。後ろには核爆発からわが子を守る母親の像「死よりも強し」が見える=2025年8月、カザフスタン・セメイ(撮影・小崎一記、共同)
 「原子湖」はソ連が水源を確保する目的で核爆発を起こして造った人工的な湖だ。爆発から60年が経過した今も放射線量が高く、防護服の着用が推奨される=2025年8月、カザフスタン・セメイ郊外(撮影・小崎一記、共同)
カザフスタン・セメイ、旧セミパラチンスク核実験場

 車が速度を上げるたび、頭が天井にぶつかる。カザフスタン北東部セメイから2時間。舗装された道がない草原の先に、核爆発で生み出されたチャガン湖、通称「原子湖」がある。地図ではチャガン川の北に、不自然な丸い円で表示される。

 黒ずんだ水面(みなも)が静かにたゆたう。岸辺は現在も放射線量が高く、当局から「15分以上滞在しないで」と念を押された。だが、付近には注意喚起の看板も、線量計もない。転がる数本のウオッカ瓶を見た運転手が「ピクニックをした連中が解毒したんだ」と冗談を言う。ここで釣りをする人や、泳ぐ人もいるという。

 1949~91年、面積が四国ほどもあった巨大な「セミパラチンスク核実験場」で、ソ連は...

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