驚くほど広い範囲で、甚大な被害が生じている。多くの犠牲者が出た。家を失い、助けが必要な人は少なくない。被災者支援と復旧のため日本も協力したい。

 自然災害を防ぐため、原因として指摘されている気候変動への対策を急がなければならない。

 インドネシア、スリランカ、タイなどで11月下旬に豪雨による洪水が同時発生した。犠牲者は合わせて千数百人に上る。今も多数の行方不明者がいるとみられる。

 インドネシア・スマトラ島にはサイクロンが上陸した。洪水や土砂崩れが広範囲で発生し、各地で集落が孤立した。

 別のサイクロンが上陸したスリランカ政府は非常事態宣言を出した。現地では2004年のスマトラ沖地震による大津波以来最悪の被害と報じられた。

 タイでは南部ソンクラー県を中心に被災し、一部市街地で水位が3メートル近くまで上昇した。市街地の冠水は収まり始めたという。

 被害の大きさに心が痛む。避難生活を余儀なくされる人たちに、十分な支援を届けてほしい。

 日本からスリランカに向け、医師や看護師で構成する国際緊急援助隊医療チームが派遣された。国際協力機構(JICA)はタイに緊急援助物資を届けた。

 現地では道路や橋などのインフラ設備に甚大な被害が出ている。復旧に向け、できる限り支援を続けていきたい。

 今回のサイクロン上陸について、インドネシアの気象当局は「通常の進路ではなく、異常気象だ」と指摘する。

 地球温暖化による気候変動がこれだけの被害を生んでいるとすれば、憂慮すべき事態だ。

 環境保護団体は森林伐採により保水力が下がり、洪水や土砂崩れが起こりやすくなったと訴える。森林伐採は温暖化を招く要因の一つでもある。

 現地で治水などのインフラ整備が不十分だったことが、被害を大きくしたとの見方もある。

 インフラが整っていない新興国や途上国で、異常気象による被害が大きくなることを認識しなければいけない。

 ブラジルで開かれた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)で、温暖化対策のための途上国向け支援の具体化を目指し、2年間の作業計画を策定することが決まった。

 先進国は資金拠出だけでなく、技術面での支援などを着実に進めてもらいたい。