首相と物価高の中にある一般の人との金銭感覚が異なることが露呈した。違法性はないとしても、政治資金の使途や規模として適切なものなのか、疑問を覚える。

 自民党総裁の高市早苗首相が衆院選の当選祝いとして、約3万円のカタログギフトを、自身を除く全ての党所属衆院議員315人に配ったことを明らかにした。

 総額は明確にしていないが、単純計算でも約945万円になる。1回の贈答で1千万円近くを支出するのはあまりに多額で、あぜんとするものだ。

 首相は「当選したことへのねぎらいの気持ちを込めた」と贈った理由を説明し、カタログについては議員活動に役立ててもらう「品物」を寄付したとした。

 自身が支部長を務める政党支部から支出しているとして「法令上も問題ない」と強調している。

 首相が言うように、政治資金規正法は、政党や政党支部から政治家個人への寄付を認めている。

 個人から公職の候補者の政治活動に対して金銭や有価証券を寄付することはできないが、物品なら寄付できる。

 首相が「問題ない」と言うのはこれらを踏まえてのことだ。

 一方で、規正法は政治資金を、民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財としており、政治資金には、民主主義に資するようにとの理念がある。

 そうした点からすれば、政党支部の政治資金は、支部の活動に使われるのが適当だろう。首相が自らの財布のように使い、同僚議員に個人名で「お祝い」を贈ることが妥当なのかどうか。

 今回の案件からは、「政治とカネ」の問題に対する自民の反省が乏しいことも浮かび上がる。

 昨年3月に、石破茂前首相が当時の自民衆院1期生15人と公邸で会食した際に、土産名目で1人当たり10万円分の商品券を配布したことが問題になってから、まだ1年もたっていない。

 短期間に同様のことを繰り返すのは軽率だ。高市首相は石破氏の問題をどう受け止めたのか。

 首相周辺には、石破氏の事例と比較し、「金額も種類も違う。社会通念上おかしなことではない」と擁護する声がある。

 しかし、政治資金に詳しい識者が「衆院選後に首相が議員全員に配るのは聞いたことがない」とするように、今回は対象者の人数が比べものにならない。総額は石破氏の支出をはるかにしのぐ。

 ギフトを受け取った議員から、首相の対応は「常識の範囲内」で、内容も「華美なものではない」との声が上がるのも、日常的な物品のやりとりをうかがわせ、一般的な感覚とかけ離れている。

 政策論議が急がれる国会で、新たな「政治とカネ」の問題が浮上した現状を憂う。首相をはじめ政治家は襟を正さねばならない。