至急必要な内容に絞った補正予算とはとても言えない。政策実現を優先するあまり、予算の膨張を許し、修正することなく通過させた野党側にも責任はある。
政府の経済対策の財源となる2025年度補正予算案が11日、衆院を通過した。16日にも成立する見込みとなった。
物価高への対応や成長戦略の強化が柱で、支出に当たる一般会計の歳出は18兆3034億円と、新型コロナウイルス禍後では最大規模に膨らんだ。
参院では過半数に足りない自民党と日本維新の会の連立政権で、補正予算の成立にめどが立ったのは、野党の国民民主と公明の両党が賛成に回ったことが大きい。
今回の補正予算案で政府は、ガソリン税の暫定税率廃止や自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の特別会計から国が借り入れた分の一括返還といった国民民主の要求を組み込んだ。
10月まで連立政権にいた公明が掲げていた1人当たり2万円を給付する「子育て応援手当」を盛り込み、公明にも秋波を送った。
政策を実現したい両党と、与党の思惑が一致したと言っていい。
しかし、物価高対策で自治体が自由に使える2兆円の「重点支援地方交付金」は、おこめ券やプレミアム商品券の活用などが想定され、ばらまき感が強い。
基金の積み増しや、防衛費を前倒しする防衛力整備計画の経費などもあり、補正予算で対応する緊急性や必然性には疑問が湧く。
高市早苗首相は、大規模な歳出は積算の結果だと主張するが、経済官庁幹部は「最初から石破政権時代を大きく上回るのが大前提だった」と指摘している。
与野党拮抗(きっこう)の国会で、課題がある予算案の修正に、野党が連携できなかったことは残念だ。
大盤振る舞いの一方で、財源の捻出に向けた議論は低調だった。
歳入は税収の上振れ分や税外収入で賄えず、11兆6960億円の国債を発行する。25年度当初予算と補正予算を合わせた国債発行額は40兆円超に膨らむ。
高市首相は計42兆円超だった24年度を下回るとして、財政規律は守られていると説明した。
しかし補正予算に限れば、国債発行が約6兆7千億円だった24年度より、25年度は約5兆円も増えている。首相にとって都合のいい説明だと指摘せざるを得ない。
今後、高市政権が26年度の予算編成に向けて積極財政姿勢を維持した場合、円、国債、株式が売り込まれる「トリプル安」となり、「日本売り」を生じさせると警鐘を鳴らす研究者もいる。
ウイルス禍で膨らんだ歳出構造を平時に戻さず、財政悪化の懸念が広がれば、市場の信認を失う恐れがあると警戒する必要がある。
今日始まる参院審議で、野党は改めて課題を追及するべきだ。
