エネルギーの多くを中東に頼る日本にとって、混乱の長期化は最大の不安材料だ。実効性のある対策で経済への打撃を抑えたい。
高市早苗首相は石油備蓄を16日にも放出すると表明した。米国とイスラエルのイラン攻撃に伴う石油価格の高騰に対応し、日本単独で実施する。
国の基金も活用してガソリンの小売価格を全国平均で170円程度に抑える。軽油、重油、灯油も同様の措置を講じる。
レギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格が9日時点で前週より3円30銭高い161円80銭となり、来週はさらに上昇する可能性が指摘されている。
放出は、経済活動に不可欠な石油を安定的に供給することで、製品の価格を抑制し、景気の下支えを狙ったと言えよう。
日本では円安によって原油調達にかかるコストが一段と膨らむ恐れもあり、消費者の不安解消を急いだ形でもある。
放出はロシアによるウクライナ侵攻後の2022年以来だ。前回は各国が協調して放出した。
日本は原油輸入の9割以上を中東に依存し、ほとんどがホルムズ海峡を通過する。しかし、イランは海峡を事実上封鎖した上、機雷の敷設を始めたと報じられた。
首相は「今月下旬以降、原油輸入は大幅に減少する見通しだ」と述べた。事態が緊迫の度を増していると捉えたのだろう。
日本には国や事業者、産油国による備蓄が約8カ月分ある。今回放出するのは約1カ月半分だ。
石油備蓄の放出を巡っては、日米欧など石油の主要消費国でつくる国際エネルギー機関(IEA)が臨時会合を開き、過去最大規模の放出を提案したことを、米紙が報じていた。
先進7カ国(G7)もエネルギー相会合で「世界のエネルギー供給を支えるために必要な措置を講じる用意がある」とする声明を取りまとめた。
赤沢亮正経済産業相は会合で、加盟国が同じタイミングで放出する協調放出について「日本は支持する立場だ」と発言した。
各国が協調放出を検討する中で、日本が先んじた格好だ。
だが、事態の沈静化は見通せず、放出を長期間にわたり、継続して行うことは難しい。
首相は中東依存度の高さを放出の理由としたが、新たな調達先の確保を急ぐ必要もある。
米国とイスラエルがイランを攻撃して以降、戦闘は激化の一途をたどっている。
イランによるホルムズ海峡での機雷敷設について、トランプ米大統領は、事実なら「前例のない水準の軍事的措置」を取ると交流サイト(SNS)で警告した。
国際社会は双方に改めて強く自制を求めるとともに、停戦への説得を尽くすべきだ。

