城下町で長年守られてきた歴史と文化が世界に認められた。地域の努力をたたえたい。この登録を契機に、伝統を継承する方策を考えねばならない。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産となっている「山・鉾(ほこ)・屋台行事」に、村上市の「村上祭の屋台行事(村上大祭)」など4県の祭りが追加登録されることが正式に決まった。
追加登録を決定したユネスコ政府間委員会は、それぞれの担い手が保護や伝承に熱心に取り組んでいるだけでなく、文化的アイデンティティーの強化に貢献し、祭りが「地域結束の要」になっていると評価した。
この間、屋台を守り伝えてきた地元の人たちの熱意に敬意を示し、登録を喜びたい。
村上大祭は毎年7月に開かれ、「おしゃぎり」と呼ばれる屋台が町を巡行する。村上甚句を歌いながら屋台を引き回す人たちの一体感が見ものだ。
1633(寛永10)年に西奈彌(せなみ)羽黒神社が現在の場所に移ったことを祝ったのが起源と伝わる。
城下町の19の町内に屋台がある。二つの車輪がある2階建ての構造で、漆塗りの技を凝らした装飾や彫刻が施されている。2階は人形などを乗せる飾り台で、七福神や縁起物が題材になっている。
最も古い屋台は1760(宝暦10)年に造られたという。地元の職人が修理や車輪の交換をしながら使ってきた。
村上独自の特徴もある。同じ無形文化遺産に登録されている京都の祇園祭で巡行する山鉾(やまほこ)は四輪だ。村上が二輪なのは、城下町の狭い道や角を回りやすいように考えられた工夫だという。
屋台は地域の文化と職人の技術を体現する存在だといえる。
懸念されるのは、地域の少子化と人口減少が進んでいることだ。
祭りの担い手だけでなく、屋台の修理などに取り組む職人をどう確保し、育てていけるかが課題となる。次の世代に引き継いでいけるよう知恵を絞りたい。
今回、福井県の和紙と、伝統的畳作りも追加登録された。日本の無形文化遺産は「伝統的酒造り」など23ある。政府は今後も「書道」「神楽」「温泉文化」の登録を目指している。
日本の祭りや伝統的な技術、文化が世界から評価されることは、保存や継承に取り組んできた人々にとって大きな力になるだろう。それぞれの文化を守り続けるための支援体制も整えたい。
