抗日戦争映画の巨大な撮影セットに立つ渋谷天馬。旧日本軍の攻撃で燃えた様子を再現した建物の横で、観光に来た多くの中国人親子が記念撮影していた=2025年8月、中国上海市(撮影・武隈周防、共同)
 抗日戦争映画の巨大な撮影セットに立つ渋谷天馬。旧日本軍の攻撃で燃えた様子を再現した建物の横で、観光に来た多くの中国人親子が記念撮影していた=2025年8月、中国上海市(撮影・武隈周防、共同)
 日本人男児が刺殺された現場近くに手向けられた花束。中国語に加えて、日本語で「あなたを喪(うしな)う社会であってはならなかった。ごめんなさい。安らかに」とのメッセージが添えられていた=2024年9月、中国広東省深☆(土ヘンに川)市(撮影・武隈周防、共同)
中国・北京、広東省深☆(土ヘンに川)

 「日本語を話さないで」。ピリピリした空気に包まれた。日中戦争映画の巨大なセットが組まれた上海市内の撮影所。日本人俳優、渋谷天馬(しぶや・てんま)(56)が周囲を見ながら小声で伝えてきた。観光に来た中国人親子がすぐ横を通り過ぎる。「日本兵が中国人の首を切り落とした場所だ」。映画の一場面を思い出し、親子が嫌悪の表情を浮かべた。

 中国を拠点に15年以上活動してきた渋谷。“日本人である”こと。それだけで国際問題、政治問題、歴史問題にいや応なく巻き込まれた。「日本人は『負の十字架』を背負っている」と語る。

 2025年、習近平(しゅう・きんぺい)指導部は「抗日戦争勝利80周年」を大々的に掲げた。渋谷は秋...

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