協調の上に成り立ってきた国際秩序に背を向ける判断だ。自国の武力のみを頼るのか。行き過ぎた米国第一主義を憂える。

 トランプ米大統領は、66に上る国際機関から脱退し、資金拠出も停止するよう各省庁に指示する大統領覚書に署名した。

 影響が大きいのは、国連気候変動枠組み条約からの離脱だろう。

 条約は1992年に採択され、約200の国や地域が参加する。温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」のほか、各国が将来の温暖化対策を毎年議論する国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)の前提となっている。

 米国は第1次トランプ政権下の2020年にパリ協定から離脱、バイデン前政権下で復帰したが、今月27日に再離脱する。

 協定の前提である条約から離脱すれば、将来の政権交代後にパリ協定に復帰するにしても時間がかかるのは必至とみられる。

 温暖化抑止に向けた取り組みにとって大きな打撃である。

 地球規模の気候変動に対処するには多国間の協力が欠かせない。

 しかしトランプ氏は、地球温暖化は「現実には起きていない」と否定してはばからず、国連による気候変動対策は「史上最大の詐欺だ」と主張する。

 国連女性機関や国連貿易開発会議、東京にある国連大学といった機関からも脱退する。

 ルビオ米国務長官はこれらの機関を念頭に「国益から懸け離れている」と説明した。自国優先をあからさまに認めるものだ。

 トランプ氏はこれ以前にも、国連人権理事会や国連教育科学文化機関(ユネスコ)、世界保健機関(WHO)などからの脱退を表明している。

 かつて米国が創設を主導した国連に対して特に手厳しい。予算の無駄遣いを指摘するほか、紛争解決に影響力を発揮できていないと批判する。

 昨年の国連総会では、米国が単独で動く方が成果を出していると豪語した。

 多くの国が協力して問題を解決する多国間主義との決別を宣言したといえるもので、危うい単独主義である。協調せず、武力にものをいわせる危うさだ。

 年明け早々の米国によるベネズエラ攻撃は、その表れに他ならないだろう。国際規範を軽んじてはならない。

 脱退の一方で、国際労働機関や国際電気通信連合といった国際標準の設定を担う組織にはとどまり、影響力を残す。自国優先の思惑が目に余る。

 国連は、米国からの資金停止を受け、組織のスリム化など改革を急ぐ必要がある。

 日本は、米国が抜けた国際機関における役割を探らねばならない。多国間協力を通し、国際平和に積極的に関わるべきである。