「強い経済」への戦略を打ち出した。さらに安全保障政策においても「強さ」を強調した。高市早苗首相がタカ派色の濃い政策に突き進むことを憂慮する。
高市首相は20日、就任後初めてとなる施政方針演説を衆参両院の本会議で行った。
「責任ある積極財政」を施政の本丸として位置付けた。「物価上昇に負けない賃金上昇を実現する」と表明した。
先端技術や成長が期待される分野への官民による投資を促す。働き方の見直しを含め「成長のスイッチを押しまくる」とし、強い経済を構築するためなら「必要な財政出動はためらうべきではない」と主張した。
懸案の物価高対策は、2年間に限り飲食料品の消費税率をゼロにすると掲げた。赤字国債に頼らない財源の在り方などは超党派の国民会議で検討する。
だが与野党の主張は、減税の期間や対象が大きく異なる。飲食事業者の負担への目配りも欠かせない。与党が、衆院選圧勝の勢いで進められるものではない。
減税が財政を悪化させる懸念は根強い。国際通貨基金も消費税の広範な税率引き下げは「避けるべきだ」と提言した。
減税を実行するのであれば、懸念を払拭するだけの十分な国会議論が必要である。
2026年度政府予算案は成立を急ぐあまり、審議をおろそかにしてはならない。首相による衆院解散が国会召集の遅れを招いた事実を重く受け止めるべきである。
高市首相は、強い経済だけでなく、力強い安保政策を推し進めるとも語った。
防衛力の強化へ向け「根本的に転換していく」とし、国家安保戦略など安保関連3文書について、本年中に前倒しで改定することを明言した。
防衛装備品の輸出に関し、非戦闘目的の5類型に限ってきたルールの見直しも加速する。
首相は、殺傷能力のある武器輸出解禁へとかじを切る構えだ。その先には、持論の「非核三原則」見直しに踏み込む可能性があるのではないか。
平和国家としての日本の姿を変える大転換になり得る。強さにこだわりすぎる政治姿勢の危うさを指摘せざるを得ない。
施政方針の冒頭で掲げたのは、日本維新の会との連立政権合意書の実現だった。
その合意の通り、憲法改正論議の加速にも言及した。しかし改憲機運が高まっていない現実を忘れてはならない。
政治改革への意欲は伝わってこなかった。
衆院選で審判を受けたことで、派閥裏金事件のみそぎが済んだとの認識が自民党内にあるのだとすれば、国民の意識と大きく懸け離れている。
