関税を巡る不透明感がまた増した。貿易環境を混乱させる米国の利己的な振る舞いが目に余る。

 トランプ米政権は24日、日本を含む全世界を対象に、10%の新たな関税を発動した。

 政権が各国・地域に課した「相互関税」などの関税措置に対し、米連邦最高裁が違法とする判決を出したことを受け、150日間の「代替関税」としている。

 日米の相互関税は、第2次トランプ政権発足前の関税率が15%未満の品目は一律15%とし、15%以上の場合はその税率を維持する仕組みだった。

 代替関税は政権発足前の関税率に10%を上乗せする。政権発足前に5%を超えていたものは、相互関税よりも高い税率になる。

 大統領は、代替関税を15%に引き上げるとも表明しており、米国を巡る不確実性がさらに高まる懸念がある。

 関税を武器にしたトランプ氏のディール(取引)外交は、世界を振り回してきた。日本は昨年、20%を超える関税を通告された時期もあった。

 そうした折衝術を政治ショー化し、「勝利」を誇示してきた。違法との判決を受けても懲りずに関税を意のままに扱おうとする姿勢は、決して国際社会の理解を得られるものではない。

 しかしトランプ氏は、24日に行った2期目初の一般教書演説で、高関税措置を今後も続けることを明言した。

 関税は、ビジネスの前提である。その変転が、対米輸出の混乱を招く恐れは大きい。

 国内企業からは「(米政府の)動きが激し過ぎて対応が追い付かない」との困惑が聞かれる。経団連も「(事業環境の)予見性が低下し、投資判断でリスクが高まっている」と懸念する。

 日本政府には、貿易の混乱を抑える取り組みが求められる。代替関税の詳しい情報を集め、企業に提供してもらいたい。

 昨年の日米関税合意に基づく5500億ドル(約85兆円)もの対米投融資についても、今後の在り方を日本政府が説明すべきだろう。

 これまで徴収されてきた多額の関税の返還を企業が求め、訴訟が相次ぐ事態も想定される。米政権が財政ショックと向き合うことになると指摘する専門家もいる。

 今回、連邦最高裁はトランプ政権が関税の法的根拠とした国際緊急経済権限法について、大統領に関税発動の権限を認めていないと判断した。

 大統領による権力の乱用であると認める判断だ。トランプ氏にブレーキをかける機能が働いたことは評価したい。

 強権をたしなめた最高裁判決をトランプ氏が謙虚に受け止めるよう求めたい。看板として掲げてきた高関税政策がいかに問題か、省みる機会にするべきだ。