一方的な侵攻で始まった戦争の終結への糸口がいまだにつかめていないことを深く憂慮する。尊い命が奪われ続けている。これ以上、終戦を先延ばしにはできない。
ロシアのような大国が横暴さの度を増し、国際秩序を破壊していることを懸念する。
ロシアによるウクライナへの侵攻は24日で4年となった。戦闘が長期化し、両軍に膨大な犠牲が出ている。
米シンクタンクの推計によると、ウクライナ軍の死傷者は約50万~60万人で、戦死者は10万~14万人と推計される。
消耗戦を展開するロシア軍は死傷者数が計約120万人に上った。戦死者は27万5千~32万5千人という。
領土の確保を目指して激戦地に多くの戦力を投入しており、北朝鮮から送られた兵士も命を落としている。
◆民間人の犠牲を憂慮
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、民間人の犠牲も増えている。ウクライナでは4年間に少なくとも1万5千人が命を落とし、4万人以上が負傷した。
民間人の累計の死傷者数は年を追うごとに増えている。
ロシア軍が無人機や長距離ミサイルを使った攻撃を強化したほか、地雷や不発弾の爆発による犠牲も後を絶たない。
ロシア軍は物流や電力インフラを集中的に攻撃しており、記録的な寒波に見舞われるウクライナで市民は暖房や電気がない中で凍えている。
高齢者や幼い子どもなど弱者が大きな影響を受けている。民間人を意図的に苦しめ、戦争継続への国民の士気をくじこうとする狙いは卑劣だ。
ロシアのプーチン大統領がソ連崩壊でロシアの支配から逃れた国々を取り戻し、「帝国ロシアの版図」を復活させて歴史に名を残したいと望んでいるとしたら、愚かしい。
戦争の影響は全世界に及ぶ。ケニア政府はロシア軍に千人を超えるケニア人雇い兵が勧誘されていたとの報告書をまとめた。大半がだまされて渡航し、前線で戦っていたという。
ウクライナ政府はアフリカの少なくとも36カ国から1400人以上が侵攻に参加していると明らかにした。
経済苦につけ込んで国外から兵士を集めているとすれば、あってはならないことだ。
◆公正な和平の実現を
米国の仲介による和平交渉は断続的に行われてきた。1月から3カ国高官協議が3回実施された。東部ドンバス地域のドネツク、ルハンスク両州の扱いを巡り双方の溝が埋まらない。
ウクライナ側は現在の前線で戦闘を停止し、領土交渉に入ることを求めている。当初はロシア軍の撤退を主張していたが、一定の譲歩をした格好だ。
一方、ロシア側はドンバス地域全域からのウクライナ軍撤退と領土割譲を求める姿勢を崩していない。今年に入ってからは、昨年8月の米ロ首脳会談で得られた「一連の理解」が基礎になると主張している。
一連の理解が何を指すのか、内容は明らかにされていないものの、東部2州と、北大西洋条約機構(NATO)加盟をウクライナに放棄させることなどで一致したとの見方がある。
米国のトランプ大統領が11月の中間選挙を前に目立った成果を求め、ウクライナ側に譲歩するよう圧力を強めていることも気がかりだ。
ウクライナのゼレンスキー大統領は「独立と主権を損なう妥協はできない」と強調する。
ウクライナへの最大の援助国だった米国は昨年3月、軍事援助の停止を表明した。米国が手を引いた後は、欧州諸国が支援額を増やして穴を埋めている。日本も非殺傷装備に限った参加を検討している。
和平協議は米ロ両大国の思惑で進むのではなく、ウクライナの主権を守る決着でなくてはならない。日本は欧州各国と連携して、ウクライナのための終戦を実現するべきだ。
