国民生活を置き去りにしてまで、なぜ今解散なのか。自らが理想とする国家をつくるために信を問うと言っているようにも聞こえる。解散権の乱用と批判されても不思議ではない。
高市早苗首相が、23日召集の通常国会冒頭で衆院を解散すると表明した。衆院選は27日公示、2月8日投開票となる。
記者会見で首相は、自らが総理でいいのかを「国民に決めていただきたい」とし、「自身の進退を懸ける」と述べた。与党で過半数が目標とした。
解散翌日から投開票までは16日間で戦後最短となる。内閣支持率が高いうちに衆院選に踏み切ることで、自民党の議席を増やせるという計算があるのだろう。
首相は「国民の信任を得ることができたら、政策実現のスピードを加速できる」と語った。
だが昨年10月に就任したばかりでまだ目立った実績はなく、信任は白紙委任に等しい。
解散すれば一定の政治的空白が避けられず、2026年度予算の早期成立を図るとした従来の説明とも矛盾する。国民生活に直結する予算よりも、党利党略を優先した判断と言わざるを得ない。
首相は、自民と日本維新の会との連立政権合意書に盛り込んだ政策についても信を問うと述べた。行き過ぎた緊縮志向を終わらせるとし、時限的な食料品の消費税減税を検討することも示した。
消費税減税は自らの「悲願だ」としたが、レジシステムの改修が必要だなどとして慎重だった昨年11月の国会答弁とずれがある。
減税に伴う財源は「どうあるべきか相談させていただく」とするにとどめ、首相が掲げる「責任ある積極財政」と言えるか疑問だ。
会見で「政治とカネ」の問題に一切言及しなかったことは、国民への誠実さを欠いている。
風雪が厳しい2月の選挙戦は1990年以来36年ぶりとなる。
選挙運動や投開票が悪天候の影響を受けやすい季節に重なり、大雪時の対応に豪雪地から不安の声が上がるのはもっともだ。
気になるのは、解散の理由に、前回衆院選で自民が公約していなかった「国の根幹に関わる重要政策の大転換」を挙げた点だ。
首相は会見で、国際情勢が厳しさを増しているとして、安全保障政策を抜本的に強化し、国家安保戦略など安保関連3文書を前倒しで改定するとした。
インテリジェンス(情報活動)機能の強化に向けスパイ防止法制定や国家情報局、対日外国投資委員会の設置を急ぐ考えを示した。
皇室典範と憲法の改正に取り組むことも表明した。
いずれも首相が言うように、国の在り方を大きく変える重要な問題である。選挙結果で是非を決するのではなく、国会で慎重に議論を重ねる必要があるはずだ。
