不備を30年間見落としてきた東京電力の管理体制に不安を抱かざるを得ない。最優先すべき「安全」に関わる不備であり、再稼働をわずか1日延期するだけで県民の理解を得られるのか疑問である。

 東京電力は、20日に予定していた柏崎刈羽原発6号機の再稼働を見送った。

 制御棒の警報システムに設定ミスが見つかったことによるもので、関係者によると、設定を直し、動作確認後、原子力規制委員会に報告して問題がなければ、21日にも再稼働させる見通しだ。

 驚くことに、1996年に6号機が運転を開始した当初からの設定ミスだった。

 制御棒は原子炉の出力を調節するブレーキのような役割を果たす重要装置である。

 近い位置にある複数の制御棒を抜くと燃料の核分裂反応が進むので、原子炉停止中はこれを防ぐため、離れた位置の2本をペアで動かすように設定している。

 ペア以外の制御棒を引き抜こうとすると警報が出る仕組みだが、17日の定例試験では正しく作動しなかった。

 東電によると、本来の組み合わせ以外の制御棒をペアに設定するミスが、およそ2万ペアのうち88ペアあることが判明した。

 動作の定例試験を毎月実施してきたはずだ。なぜ警報システムの不備が長年放置されてきたのか、徹底究明しなければならない。

 求められるのは、他にも誤りがないか、慎重に見極めようとする姿勢であるはずだ。1日程度の延期で、それができるとは到底考えられない。

 再稼働を巡っては、県議会から「信任」を受けた花角英世知事が昨年12月、国に同意を伝えた。2011年に福島第1原発事故を起こした東電にとって事故後初、柏崎刈羽原発としては約14年ぶりの再稼働となる。

 この機会を逃すまいと、再稼働を急ぐのだとすれば言語道断である。これまで東電が強調してきた「安全最優先」に反する。

 折しも、静岡県にある浜岡原発の再稼働の前提となる審査で中部電力による耐震設計の不正が発覚したばかりである。早期に再稼働させるための不正だったのではないかとの疑いが持たれている。

 発電による収益を優先し、安全性をおろそかにする土壌がないか、電力会社への疑念が膨らむのは当然だろう。

 柏崎刈羽原発では安全対策の不備が繰り返されてきた。

 重く見た原子力規制委は21年4月から23年12月まで事実上の運転禁止命令を出していた。過去の失態やトラブルを踏まえれば不信感の払拭は容易ではない。

 東電が警報システムのミスを直せば足りると考えているのであれば楽観的すぎる。立地地域の不安と誠実に向き合ってもらいたい。