
何となく住むことになった町、通勤電車の窓から見える景色、旅先で歩いた路地。あらゆる土地には、そこに刻まれてきた歴史があり、人々が営んできた生の記憶があるのだろう。そう考えると、自分が今、その場に立っていることの重みが増すような気持ちになる。この本を読み終えた後、そんな感覚を覚えた。
土地の記憶をテーマに執筆を続けてきた小説家、畠山丑雄さんの新著であり、今年1月に芥川賞の受賞が決まった本作の舞台は、大阪府茨木市。その地に偶然引っ越してきた主人公の早野は、深夜の散歩中、耳に聞こえてきた鐘の音に誘われるようにある男と出会う。
「お前には重さが必要なんや」と男は早野に銅鐸を手渡す。その後、早野は男を...
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